保護
「はあっはあっ・・・」
僕は、走っていた
行くあての無いまま走っていた
壊された建物
割られたガラス
荒らされた道路
折られた標識
1か月たてた計画が台無しだ
それも予想外なレジスタンスに…
「まあ、目的は果たせたからいいかな」
弾痕が残る軍事車両
鉄クズと化した戦車・・・恐らく10式戦車だろう
知る限り最新鋭の戦車が、見るも無残に破壊され道を塞ぐバリケードと化していた
「はぁ・・・休憩するか」
道端に放置されたジープのドアをこじ開け、座席で一息つく
眠い・・・意識が遠のく
睡魔に負けそうになった所で、バタバタとヘリと思しき音が空から響く
自らの危険を悟った僕は座席の奥に潜り込んだ
ヘリはかなり近く・・・しかも低高度でホバリングをしてるようだ
そして、ガシャッ と何か機械のような物が降りてきた
「{生体反応が近くにある・・・付近を捜索せよ}」
無線のやりとりが聞こえる・・・
「了解・・・見つけた場合はどうしますか?」
「{金属反応が無い、恐らく生身の人間だろう。射殺を許可する}」
一息つかせろよな…まったく
ヘリのローター音が遠くなっていく
「生体センサーに反応・・・近いな」
敵は一人
恐らく先ほど会った兵士と同じようなアーマーを身につけている
こちらの武器は施設に侵入したとき落としてしまいナイフ一本である
相手は銃殺と言っていたから恐らく銃器を持っている
状況は圧倒的こちらが不利
警戒しながらドアの隙間越しに様子を窺う
相手の銃器は・・・AK系統だろうか
銃器は僕の知っている銃器っぽい。セーフティーは・・・まあかかってるわけないよな
物音を立てないように自分のカバンの中身を見ると
ハッキング用PC、赤外線ゴーグル、レーザーカッター、ドライバー
・・・銃を相手として役に立ちそうな物無いな
さらにジープの中を物色していると、思わぬ物を発見した
サブマシンガン?(恐らくP90と思われる)
持ち主は持って逃げようとしたんだろうが、シートに付いている赤黒いシミがが真実言いたげにしている
弾倉5つくらいは、ある。
とにかく、この状況で武器は有難い
試しに弾倉装填してみた
その時、力みすぎて装填に手惑い大きい音を立ててしまった
「今の音は何だ?」
ガシャッガシャッと足音が近づいてくる
畜生・・・ばれたか
ドアを蹴り開けて、目の前にいる敵兵に銃口を向ける
「食らいやがれッ!!」
引き金を引いた
そして銃声が静まりかえった住宅街に響き渡る
腰溜めの姿勢でサブマシンガンから放たれた弾丸は、運よく敵の防護されていない首の部分に命中し兵士の頭と命を奪った
でも人を殺すその感覚に、僕はもう何も感じない
「さっさと帰るか…」
取りあえず弾切れが心配だったので銃のリロードをした
さっきの音で位置が連中に知られたかもしれない
痕跡を残さないように薬莢をポケットに入れ、倒れた兵士から拳銃を奪いその場を去ろうとした
ーーー瞬間
「そこの人!!銃を捨てて両手を上げなさい!!」
目の前に突然グレーの色をした機体が、行く手を阻むように道を塞いだ
口調から恐らく女だろう、さっき助けた女の子と同じような機体に身を包んでいた
そしてその手に構えられているM4の銃口は今、俺に向いている
ここで撃たれて死ぬわけにもいかないので俺はサブマシンガンを路面に置き、ゆっくりと両手を上げる
「民間人みたいね・・・身柄を保護させてもらいます」
どこから民間人という発想に・・・でも、保護って事は殺されるよりは数百倍マシだな
それより・・・どんな勢力関係なのか調べないとな
目の前の人物が、僕にとって敵であるのか・・・否か
「分かりました。このサブマシンガンは持っててもいいですか?」
しかし何がともあれ武器が無いというのは心細い
「許可します」
認めるのかよ・・・まあ、整備しとかねーと、この銃の持ち主に申し訳が立たないからいいかな