恐怖
「ぐ・・・うっ・・・!!」
私は追い込まれていた
取っ組み合いになってから試作機体の出力が急に不安定になった
突如パワーアシストが切れ、敵にナイフをのど元に突き立てられた
パワーで完全に負けている
そのナイフが私の喉を貫く
ここで・・・わたしは死ぬの?
こんな死に方したくない・・・よ・・・
「・・・?」
おかしい、もう私は抵抗をやめたというのに
その刃はいつまでたっても私の喉を貫かない
ポタタッ
ふと、顔に落ちる生ぬるい液体
目を開けると、目の前には喉を近接ナイフで刺された状態の敵搭乗者が目に入った
何が起きたの?
その搭乗者がぐったりと腕を垂れた
どうやら絶命したみたいだ
ナイフが抜かれ、支えを失った搭乗者が私の前に倒れる
その後ろに隠れていたのは、何と生身の人だった
私がその人の目を見た、瞬間ーーー
ゾクッ
背筋に走る、冷たい何か
「あ・・・ああ・・・・」
言葉が出ない
怖い
先ほど殺されかけた、その恐怖を上書きする程の殺意とは違う黒い負の感情
だがその人は何も言わずに私の前から走り去っていった
(ザザッ・・・フレイヤ2・・・う答しなさ・・・)
無線から連絡が入る
「こちら・・・フライヤ2」
先ほどの恐怖がまだ頭に残ってる
スイッチを押す自分の指が少し震えているのがその証拠だ
(機体のアシストが切れたみたいだけど、大丈夫?)
「私は大丈夫ですが、機体が動きません。至急回収をお願いします」
(了解、回収班を向かわせるわ。到達時間は約五分ね)
「了解、アウト」
無線を切ってため息を付く
しかし、さっきの人は一体
なぜ生身でこんな所にいたんだろう・・・