4.腐女子さん、黙ってもらえます?
「え……。」
驚いて、あたしは開いた口が閉じられない。
しぶしぶと、エレベーターに乗って部屋に戻ろうとした。
が、先程の守狩さんが話しかけてきた。
「君も今年から、1年?」
「えっ、と、ハイ今年から一年ですが。」
「俺も今年から、1年だから。
あ、壱夜先輩とは、中学が同じだったんだ。あと閠城先輩とも。」
近くにいた女子が、あたしと壱夜先輩の事を喋りだした。
「櫻木先輩とは、どういう関係なのかしら。」
「もしかして櫻木先輩の恋人っ?」
「きゃー櫻木先輩ってホモだったの?」
「じゃあ、どっちが攻めかなっ。」
「それは勿論、櫻木先輩よっ」
お願いだから、黙ってくれそこの腐女子。
くすくす笑うなら、何か言ってくれ。
「自己紹介が遅れたね。俺は、守狩 久志。1-3です。
と言っても、まだ入学式前だから組は関係ないかなー。」
「香月 唯です。僕も同じで1-3」
「へえっ、そうなんだ。じゃあ、さ部屋も近いかも知れないね。
俺は、2階の102室。君は?」
「えっと…、何号室かわからないんですけど、一応6階です。」
また、腐女子が喋りだした。頼むから、此処から離れてよっ。
「きゃー、じゃあ、やっぱり櫻木先輩が攻めね。」
「当たり前よ、あの子受けって顔してるじゃない。」
「じゃっ、じゃあ僕はこれで…」
この空気にいると、何か言い出しかねない。
守狩さんが正常でいられるのに、尊敬しますよっ。
「6階…って…生徒会じゃなかったっけ。」
「6階って、生徒会だよな…」
守狩さんが、何か疑問そうな顔であたしの事を見ていたのは見てないことにしよう。
あたしは、エレベーターに乗ると6階のボタンを押した。
エレベーターが閉まる直前に
「す、すいませんっ。」
と言ってエレベーターの中に入ってきた。
雰囲気からして、あたしと同じ1年生だろうが多分、彼の目からするとあたしは上級生に
見られているらしい。
彼は、エレベーターのボタンを押そうとした時に、驚いたようにあたしの方を見た。
多分、6階だからだろう。
彼は2階で降りた。2階は1年生と2年生で使っている。
エレベーターから降りて、部屋の前に行く。さっき、壱夜先輩から貰ったカードを入れ
る。
壱夜先輩によると、6階しか鍵が無いらしい。しかも、その鍵はカードだなんて、一体何
処のお金を使っているんだか、不明だ。
部屋に戻っても、する事が無い。
さっき、会計さんが何をして、今壱夜先輩が何をしているか気になる。
気になるけど、今、二人が何処にいるのかすら分からない。
「暇だな……」
他の1年生達は、多分自己紹介とかで盛り上がってる時だと思う。
暇なら外に出て、探検するのも良い……。
だけど、そこで迷ってたら此処に帰れなくなる。
今、長い針が指している時刻は、17時。
此処に来てから、5時間も経っていた。
17時…、夕飯の時間は18時から21時までの3時間だった気がする。
とりあえず、自室へ行って1時間寝ることにしよう。