人質交渉
「パルマン、もっと近くに来たらどうだ? 我々に刃向かったガキの顔が見てみたい」
言葉尻から余裕さが見て取れた。この優勢な状況を崩せるはずもないとでも言いたげだ。
「思ってもないことを言うのは止めろ」
パルマンは全く応じなかった。
「それより、早く取引を始めたらどうだ?」
「それもそうだな。それじゃあ、まず手始めに俺のかわいい手下たちを葬った武器を捨ててもらおうか? それから、両手を上げたまま近くまで歩いて来い」
ゴルティモアは手振りでさらに歩み寄るよう促した。
パルマンは言われるがまま、手に持っていた大口径のプラズマ銃を目の前のコンクリートの地面に投げ捨てた。ただ、両手も上げず、前に歩こうともしない。
「どうした?」
「見てのとおり、銃は捨てた。しかも、俺には逃げる場所も隠れる場所さえもない。あんたの一声で、取引する前に始末することだってできる。それに、俺はれっきとした絶滅特殊部隊の隊員だ。おいそれとお前らに例の物を渡す気はない。なぁ、ここはフェアな取引をしようじゃないか。本当に物が欲しいなら、お前が俺の恋人を連れてここまで来い」
人数的にも、状況的にも不利なのは明白だ。ただ、相手はこちらの切札を是が非でも欲しいはず。これを生かすか殺すかで自分とジュリアナの生死も決まるのだ。
「フン、お前の言い分も一理あるか。分かった。その提案、聞き入れてやろう」
ゴルティモアは思案の末に要望を受け入れた。ゆっくりと立ち上がると、先ほどから必死にもがき続ける人質の恋人を強引に立たせた。次いで、「お前が連れて行け」と背後で直立していた側近にジュリアナの身を委ねた。
倉庫内のあちらこちらに潜んでいる手下たちが警戒する中、ゴルティモアとその側近に引き連れられた恋人が近寄ってきた。
お互いの距離が二十メートルぐらいのところで、相手側は足を止めた。
金色の短髪に刈り揃えた顎鬚を生やしたゴルティモアの着るスーツが高級ブランドものだと判別がつく距離だ。歳は三十代前半。手には何かのリモコンだけで、銃器などは持っていない。
「取引をする前にお前に見せておきたいものがある」
余裕ありげに宣告すると、不意にゴルティモアは「シートを全て剥ぎ取れ!」と大声で命令した。




