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ブラッドサースティヴィーナス  作者: 檜鶯盈月
第1章 人質救出作戦
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思わぬ仕掛け

 シャッターが開け放たれたテント倉庫の中に入る前に、パルマンは中の様子を見渡した。


 ゴルティモアの命令によるものなのかは不明だが、倉庫内はほとんど明かりが点いていない。


 知覚制御者(パシーヴァー)のパルマンは視界を熱源探査モードにすることで、中にいる人数を把握できた。


 全長二百メートルほどのテント倉庫の中にはゴルティモアと人質のジュリアナを含めて十人ぐらいの人がいた。そのほとんどが銃器を持っているようだ。


「どうした、パルマン。中に入ってこないのか? 恋人を助け出したいんだろ?」

 見え透いた挑発だった。だが、ジュリアナを救うためには言われたとおりに敵地に入るしかなかった。


 視界を通常に戻した後で倉庫内に足を踏み入れた。周囲を警戒しながら十メートルほど奥に進んだ。そのときだった。


 不意に騒々しい音とともに背後のシャッターが降ろされていく。


 さすがにこの状況で外に逃げ出すわけにもいかず、パルマンは敵の思惑どおり、完全に閉じ込められた。次いで、天井の照明が一斉に点灯した。


(そう来るか――!?)

 この展開を予測してなかったわけではない。ただ、まだ取引も成立していない状況下でやるべきことではなかった。


 閉じ込めることで恐怖心を駆り立てる効果は絶大だったが、頭脳明晰な者のやり方とは到底思えなかった。パルマンとジュリアナを生きたままこの場から帰す気はないという思惑が見え見えだからだ。


 倉庫内が明るくなったことで、周囲がよく見渡せるようになった。


 中央に大きな通路が設けられ、倉庫の真ん中辺りに安っぽい二つのパイプイスが横に並んで置かれている。そこに焦げ茶色(ダークブラウン)のスーツを着たゴルティモア・ベングルムと学生服姿の恋人が座っていた。


 ジュリアナの真後ろにはレーザー光線式の拳銃(ハンドガン)を持った側近が直立し、所々にパルマンの動きを注視する手下たちがいた。しかも、さらに恐怖心を煽るかのように赤外線スコープから照射される複数のポインタがパルマンの顔や左胸に当たっていた。


 ジュリアナはガムテープで口を(ふさ)がれ、後ろ手に拘束具を嵌められているようだ。何か口を動かしながら必死にもがいていた。


 一つ気になったのは倉庫の前方部分を占めていた縦向きに並ぶ幾つもの陳列棚にはほとんど何もないのに、後方のがらんどうとした空間には複数の巨大な物体が所狭しに並んでいる点だ。


 物体には灰色のエステル帆布(はんぷ)のシートが覆い被さり、それが何なのかは見当もつかない。

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