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ブラッドサースティヴィーナス  作者: 檜鶯盈月
第4章 女神の覚醒
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帰途につく中で

 パルマンとボルファルトが指令室に入ると、他の隊員たちはのんびりと(くつろ)いでいた。

「全員、そのままの姿勢で話を聞いてくれ。八個の内臓ストレージは全て廃棄処分する運びとなった。それから、明日は休みだ!」

 その言葉に隊員から喜びの声が上がった。既に日も暮れかかっていた。


「ねぇ、長官って思ったより心が広いんだね! だったら、これから遊びに行かない?」

 アリシアが何気に呼びかけた。


「まだ勤務時間内だぞ。それに、報告書があるだろ?」

 ミハエルが水を差した。


「いいのいいの! ですよね? 隊長」

 アリシアは全く気にも留めず、ボルファルトに訊いた。


「フッ、仕方ない。今日は特別に許す」

「やったー! それで、どこに行く?」

「俺はパスだ。お前らと一緒だと酒が飲めねぇからな」

 間を置かずにロマーディオが突っぱねた。

「えー、ヴァネッサは?」

 まだ十九歳のヴァネッサも酒は飲めない部類に入る。


「悪いけど、あたしもパス。お子様三人で行けば?」

「ちょっと! お子様って酷くない? パルマンは行くわよね?」

「俺は家に帰って、早くシャワーを浴びたいな」

 率直に今の気持ちを話した。


「そっか。あんたは昨日ここに泊まったんだよね。じゃあ、なしか――」

「おい、僕の意見は無視する気なのか! それに、隊長もいるだろう?」

「いや、なしなし」

 ミハエルの言い分をアリシアは言葉どおり無視した。


「じゃあ、俺は先に帰ります!」

 さすがにこの二日間は疲れた。パルマンは隊長に頭を下げると、指令室を出た。


 更衣室に入ると、パルマン宛てに新しい制服が届いていた。思い返せば、三か所ほど制服が切り裂かれていた。傷の程度はそれほど深くなかったので、病院にまで行く必要はないだろう。


(シャワーを浴びたら()みるだろうな)

 そのために、わざわざ能力を使いたくはなかった。


 パルマンは私服に着替えると、受付嬢たちに挨拶をしてから愛用の濃紺色(ダークブルー)のエアストームに乗り込んだ。


 奇しくも、今回〝神〟との遭遇により、考えさせられることがいっぱいあった。


 その中でも、機械との共存をどうやって維持し続けられるのかが大きな課題と言えた。


 スマートフォン一つを取ってもそうだが、どれだけの人間がこの機械に依存しているのかは言わずもがなな話だ。


 スマートフォンなしでの生活がどれだけ不便かは身に染みて分かっている。


 さらに人工知能(AI)の進化が人間の生活や仕事をより便利にしていた。裏を返せば、その生活に身を委ね続ければ、人間は怠惰になっていく一方だ。


 AGIの覚醒は自分たち人間に警鐘(けいしょう)を鳴らしているのではないのかとすら思えた。


 無論、ヴァネッサが言うように人間もバカではない。今はそれに期待するだけだ。


(それに、もう二度と〝神〟は目覚めない)

 パルマンはもうこの事を考えるのを止めようと思った。


 一般庶民の住むガルボロドリナ地区には入ったが、自宅のマンションまではもう少し時間がかかる。


 取りあえず、今は早く家に帰りたかった。それから、恋人のジュリアナとこの平穏な日常を一緒に味わおうと思った。何て言っても、彼女はうちの分析官も顔負けの大手柄を上げ、この事件の黒幕を突き止めるきっかけを作ったのだから。


(後でお礼の連絡でもするか!)

 そう思うと、先ほどまでの不安な気持ちがどこかに消え去った。


 今は愛する恋人との充実したひと時を思いっきり楽しむ。それもまたいいんじゃないか、と思った。


 まったりとした心地よい気持ちを恋愛感情のない機械に理解できる日は永遠に来ないだろう。


 例えこれから先、どんなに進化したとしても――。

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