説得
まずはこれ以上争う気はないと意志表示をする必要があった。大口径のプラズマ銃を地面にゆっくりと置き、全員に同じことをするように促した。
「おい、正気か?」
ボルファルトは、パルマンの行動を訝しむ顔をした。
「正気です、隊長。俺に考えがあります。みんなも銃を置いて、両手を上げるんだ」
パルマンは両手を上げながら小声で言った。
ここで汎用人工知能を破壊されれば、せっかくの長官の秘策が無に帰す。それに、このままでは夢を打ち砕かれたベルハラートを制止させるのは不可能だ。
まずは相手を優位に立たせて、交渉に持ち込むのが最良の方法だと思えた。その中で、何か説得の糸口を探り出すしかなかった。
ボルファルトを含む隊員たちもパルマンの行動に倣った。
「なぁ、俺の話に耳を傾けてよく考えてみてくれ。さっきまでそれは間違いなく〝神〟だったじゃないか? それを爆破すれば、崇拝する〝神〟を自らの手で破壊することになる。本当にそれでいいのか?」
「ガキが知ったような口を利くな! 〝神〟はもう二度と目を覚ますことはない! お前らが一番分かっているくせにまだ戯言をぬかすか!」
「だったら、それを破壊することに何の躊躇いもないのか? 渾沌の女神エリスを覚醒させるのがあんたの生き甲斐だったんだろ?」
最初は直球を投げてみた。絶対に何か反応を見せる自信があった。
「生き甲斐? 私の生き甲斐は……」
ベルハラートは言葉の途中で口ごもった。
(ここだ! ここを突いていくんだ!)
パルマンは相手の弱点を見抜いた手応えを感じ取った。
「あんたは〝神〟という存在に縋った。救いを求めてたんだろ? もちろん、初めからこんな破滅的な考え方じゃなかったはずだ。何かがあんたの心を変えてしまった。その原因について話してくれないか」
「私を変えた原因……それは……」
急にベルハラートの目の色が変わった。
「そうだ! 全ては愚かな父親のせいだ! 奴は人類こそが更なる進化を遂げるべき存在だと馬鹿げた妄想に取りつかれ、超人化計画などという愚行に走った! 人間が恐れ多い〝神〟に及ぶはずがないのに! それも、愛する兄をその実験の道具に使いおったのだ!」
今までベルハラートは父親に溺愛された不遇な兄を恨んでいたと考えていたが、実際はその逆だった。しかも、慕っていた兄を実験の道具にして殺したと思っているようだ。この事件の全ての発端が垣間見えた気がした。




