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ブラッドサースティヴィーナス  作者: 檜鶯盈月
第1章 人質救出作戦
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独断行動

 様々な産業で人工知能(AI)を搭載したロボット化が進行する中、ベラルデルミオ地区はそれらを開発するための集積地と言うべき工業地帯だ。しかも、部品を作るのも大半がロボットの手に委ねられている。


 地図検索エンジンで目的地の位置を特定したパルマンは、約束の十分ほど前に付近まで来ていた。そこで、操縦していたエアストームを付近に停止させて、歩くことにした。


 大型のテント倉庫が建ち並ぶヒュリエント社の倉庫跡地には、それほど人の気配を感じられなかった。


 知覚制御者(パシーヴァー)のパルマンは視覚を熱源探査モードに切り替えた。すると、壁の向こう側に複数の人間の熱源反応を確認できた。全部で五人。おそらく、例の秘密結社の手下たちだ。


 数人で(たむろ)す者もいれば、しきりに周囲を警戒している者もいる。全員が両手に銃器らしき物を携えていた。


 改造人間のパルマンなら、気配を悟られずに敷地内に忍び込むぐらい朝飯前だ。ただ、手下たちが一塊に集まっていれば、足音を立てずに全員を瞬殺するのも可能だったが、それぞれが距離を取った場所にいられたのでは容易にはいかなかった。


(一気に見張りたちを殲滅するのは無理か――)

 敵地侵入による強襲案は断念して、ひとまず倉庫跡地の出入口に向かった。すると、昨晩の襲撃者と同じ戦闘服(コンバットスーツ)を着た見張りの一人がパルマンに気付き、「おい」と周辺にいた全員を呼び集めた。


「よう、お前がパルマン・エバーキースか? 本当に一人でここまでやって来るとは余程あの勝気なおてんば娘にご執心ってわけだ。それで、例の物はちゃんと持って来たんだろうな?」

 残りの見張りたちがこちらに集まって来る中、加熱式タバコを吹かした男が問いかけてきた。別の一人が無線機で連絡を入れている。


「ああ、もちろん、持ってきたさ」

「確認がしてぇ。見せてみろ!」


 状況的に自分たちのほうが立場が上だと思ってるのか、見張りは偉そうに言ってのけた。

「ここで見せるわけにはいかない。それに、下っ端のあんたに本物かどうかの区別がつくとは思えないしな」

「何だと!?」

 パルマンは事実を述べたまでだが、突然見張りたちの目の色が変わった。見下した言い方に聞こえたのかもしれない。


「同じことを二度言うつもりはない。早く人質のいるところまで連れて行け」

 怒りに燃えているのはパルマンにしても同じだ。こいつらは愛しい恋人を乱暴に(さら)った憎悪すべき(やから)なのだから。


「このガキ! どっちが優位に立っているか、分かってないみてぇだな!」

 タバコの煙を吐き出すと、男は凄みを利かせてきた。それに対しても、少しも動じない。


「おい、ゴルティモアさんが『連れて来い』って言ってるぞ!」

 無線機で話をしていた男が大声で呼びかけてきた。


「チッ、救われたな、ガキ。大人しく俺の後ろから着いて来な! 他の奴はこいつがおかしな真似をしねぇようによく見ていろ!」

 タバコの吸い殻を足で力強く踏み消すと、そのはいきり立ちながら先頭を歩き出した。


 他の見張りたちと比べても、大して能もなさそうなこの男が何故偉そうに指示を出しているのか、疑問を感じずにはいられなかった。


(まぁ、どうでもいいか)

 パルマンは先頭を行く偉ぶった男の後ろを歩いていく。他の見張りたちはレーザー光線式のマシンガンの銃口を向けたまま、二人ずつ両側から挟み込むように囲んでいた。


 形勢は圧倒的に不利だ。このままではジュリアナを助け出す前にPUDを奪われる可能性が高い。どうにかして打破する必要があった。


 パルマンは動くことにした。

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