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ブラッドサースティヴィーナス  作者: 檜鶯盈月
第3章 暴かれた黒幕
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特別禁忌区

 約二時間が過ぎた頃、巨大都市(メガシティー)テンブルムを統括・管理する渾沌(こんとん)の女神エリスが設置されたカベロアルヒム地区に潜入し、待ち合わせの場所で三台の黒いエアヴィークルは停止した。


 ここが特別禁忌区と呼ばれているのはそれなりの理由があった。少しでも不審な物体が侵入すれば、何の通告もなく配備された迎撃兵器で破壊される危険区域なのだ。


 それにも拘わらず、こうも簡単に通過できたのには理由があった。


 秘密結社の創始者が直々に雇った腕利きのクラッカーのハッキングにより、全ての検問所を含め、人工知能(AI)による探知システムはこの不審な三台のエアヴィークルを行政機関の管轄下にある巡視車両だと誤認させられていた。その上、監視システムのセキュリティネットワークに入り込み、それを統括する管制室に常駐する警備担当者たちが見るモニターの映像は、過去に巡視車両を映し出したものに切り替えられているという手際の良さだ。


 ここまで幾重にも張り巡らされた仕掛けを見破るには、余程猜疑心に凝り固まった者でない限り、それなりに時間を要することだろう。


 異変に気付いたときにはもはや何も手の施しようがないというわけだ。


 サミュエルは特殊な組み込み式内臓ストレージ――PUDの入ったケースを手に持ったまま外に出ると、《黄昏の粛清者(エピュラシオン)》の創始者の男が現れるのを待った。


 エアヴィークルに乗り込ませたオズモンドは、目的の物を受け取った後で手下たちに不意を突かせて射殺したところだ。抹殺者(イレイザー)の片割れも、まさかここで殺されるとは思いもしなかっただろう。


 数分後、別の道路から五台のエアヴィークルが近づいてきた。三台目はとても高級感のあるものだった。最後のエアヴィークルはトレーラー型で、荷台には従来の殺戮機兵(カルネージ)よりも一回り以上大きな機体が二機固定されていた。


 こちらも見事潜入に成功していた。そのクラッカーは他を圧倒するほどの凄腕の持ち主なのだろう。


 まず手下たちが降り、後部座席のドアを開ける。すぐに創始者の男は姿を現した。


 サミュエルを含めて手下たちが深々と頭を下げる中、その人物は汎用人工知能(AGI)の設置された場所に通じる閉ざされた巨大なゲートの前まで歩み寄った。


「サミュエル、ご苦労だったな」

 創始者の男は無事に全ての任務を成功させた労をねぎらった。


「ボス、これが最後の内臓ストレージです。どうぞお受け取りください」

 サミュエルから銀製のケースを受け取ると、それを手下の一人に渡した。

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