待ち伏せ
本部の屋上から飛び立つこと約一時間。絶滅特殊部隊の隊員たち全員を後部デッキに乗せた最新鋭の軍用型ヘリコプター――ヴォルテックスはレオンネクサス地区に来ていた。
ベルハラートの邸宅は富裕層でも低階級層の家々が建ち並ぶ場所にあった。しかも、住宅街から少し離れていて、付近は針葉樹の木々に囲まれていた。自ずと隣人とは疎遠だったことが窺い知れた。
ヴォルテックスは隊員全員が丈夫な綱梯子で降りるまで安定性を保ちながらホバリングしていた。それが完了すると、付近の着陸できる場所まで飛び立っていった。
ベルハラートの邸宅は跡形もなく黒々と燃やし尽くされていた。これでは死体の損傷も相当酷かったに違いない。
都市警察の調べだと、この邸宅で殺された者全員にレーザー光線式の銃器で撃たれた傷跡が残っていたようだ。要は、秘密結社の連中は一度皆殺しにした後で放火したことになる。
八人の天才脳科学者の末裔が全て富裕層の住人だったわけではない。一戸建てに住んでいたわけでもない。マンションに住んでいる者もいた。それなのに、敢えてこの家だけを放火した理由が謎のままだ。
「この有様じゃあ、この家の捜索は無意味だな」
ロマーディオが全員の思いを代弁した。そのとき、パルマンの研ぎ澄まされた聴覚が付近の木々が不自然に揺れる音を聞き逃さなかった。
「みんな、銃を構えるんだ!」
押し殺した声で伝えながら、視界を熱源探査モードに切り替えた。すると、明らかに人間と思われる熱源反応が確認された。しかも、大勢いる。両手には何かを携えていた。
「そこに隠れているのはお見通しだ。大人しく手を上げて出て来い!」
大口径のプラズマ銃をホルスターから抜くと、パルマンは視界を通常に戻しながら威圧的に声を張り上げた。隊長であるボルファルトを含めた他の隊員たちもそれぞれが手にした銃器を木々が生えたほうに向ける。
「バレちまったんなら、しゃぁねぇ! さすがは絶滅特殊部隊だけはある。まぁ、気付かれたところで痛くも痒くもねぇけどな!」
待ち伏せによる奇襲を見抜かれたとは言え、優勢な状況は変わらないとでも言いたげな声が聞こえてきた。
まず瓜二つの顔をした巨漢で屈強な体つきの男たちが現れた。その後ろからとうに見慣れた戦闘服を着て、レーザー光線式のマシンガンを構えた二十人の秘密結社の手下が姿を見せた。
「そんな馬鹿な!? ここは都市警察によって立ち入り禁止になっていたはず――」
「そいつらなら、さっき全員ぶっ殺してやったぜ!」
驚きを隠せないボルファルトの疑問に対して、オズモンドは余裕綽々と返答した。
「あんたら、まさかウォルスタイン兄弟!?」
「おう、その通りよ! 兄貴、俺たちはやっぱり有名だな!」
ロズウェルは名前が知られていることに喜びの声を上げた。
パルマンもその名前は耳にしていた。抹殺者という裏稼業を生業にする者たちの通り名だ。
(とうとう本当の殺し屋を雇ったか――)
このまま撃ち合えば、無傷ではすまない。無論、それは相手も同じはずだ。最初に抹殺者の二人を殺すべきだが、何も持っていないのが不気味に思えた。




