ウォルスタイン兄弟
夕闇に包まれた頃、バスタベリオス地区の歓楽街の一画にある若者に人気のナイトクラブにサミュエル・ラドリッジはいた。
ここから少し離れた繁華街では、今日の正午ごろに絶滅特殊部隊と何者かの銃撃戦があったようで、未だに都市警察の捜査が行われている。だが、歓楽街はいつものように賑わっていた。
煩いだけのダンスミュージックが店内に鳴り響く中、ステージから離れた席でウィスキーをロックで飲んでいる。
十数分が経過した頃、彼の前に二人の屈強で巨漢の男たちが現れた。
歳は二十代後半で、顔も背丈も体格も全く瓜二つだった。
「お前が《黄昏の粛清者》から送られてきた野郎か?」
左側にいた男が荒っぽい口調で訊いてきた。サミュエルは即座に立ち上がると、「はい」と恭しく頭を下げた。
「あなた方が噂に名高いウォルスタイン兄弟のお二方ですか?」
「おう、その通りよ! 兄弟ではなく、双子だけどな!」
その男たち――ウォルスタイン兄弟の兄であるオズモンドは豪快に笑い声を上げた。
「まぁ、立ち話もなんだ。座ろうぜ!」
向かって右側に立つ弟のロズウェルの言葉に従い、三人は思い思いの席に腰かけた。それを見計らったようにウェイターがやって来る。
「何をお持ちしましょう?」
「これよりもっと強いウィスキーをボトルごと持って来い! 氷はいらねぇからな!」
オズモンドは既に酔っているような口調で命令した。
「畏まりました」
ウェイターはメニューを見せることなく、去っていった。
「我々からの依頼は先ほど電話でお伝えしたとおりです。こちらまで足を運んで頂けたということは依頼を受け入れてくれたのですね?」
「そう急くなよ! まずは酒が来てからだ! お前らのことはニュースで耳にしてる。それにしても、あの絶滅特殊部隊を敵に回すとはな」
オズモンドの口振りだと、まだ決心は固まっていないようだ。もっと言えば、相手を恐れているようにも見て取れた。
サミュエルは酒が運ばれて来るまで少し待つことにした。
すぐにウェイターがアルコール度数の高いウィスキーを持って来た。
オズモンドはそれを掴み取ると、グラスの半分ぐらいまで注いだ。ロズウェルのグラスにも同じぐらいの量を入れる。それを一気に飲み干した。
「何か誤解されているようですね。我々は絶滅特殊部隊の奴らを抹殺してくれ、と頼んでいるわけではないんです。隊員のパルマン・エバーキースという男からこれと同じ物を奪い取ってくれさえすれば、電話でお話しした額の報酬をお払いします」
サミュエルは二枚の写真を二人に見せた。一枚は標的の顔写真、もう一枚は銀製のケースに入った特殊な組み込み式内臓ストレージ――PUDだ。
「なぁ、一つ聞きてぇことがある。何故自分たちでやるのを止めた?」
ロズウェルが怪訝そうに訊いてきた。もちろん、想定していた質問だった。
「お恥ずかしながら、これまでの戦いで思い知ったのです。我々は殺し合いに置いてはずぶのど素人であることを。そこで、凄腕の抹殺者に依頼しようという運びとなりました」
そこまで言うと、サミュエルは自分のグラスを手に取って一口飲んだ。




