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ブラッドサースティヴィーナス  作者: 檜鶯盈月
第1章 人質救出作戦
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犯行声明

 一人暮らしのパルマンは翌朝の八時過ぎに起きた。未成年にしては遅い目覚めだが、著しく能力を向上させた改造人間(レプリカント)は法律で学校に通えない。


 パルマンの両親は十五歳のときに共に亡くなった。


 昔のとても著名な劇作家が書いた演劇を見終わり、会場から出ようとしたとき、無人兵器による無差別テロの犠牲になったのだ。


 そこにパルマンはいなかった。二人きりにしてあげようと思ったからだ。


 都市警察(シティーポリス)は八方手を尽くしたが、犯人は結局見つからずじまいだった。


 その事件を機にパルマンは重罪犯たちのみを取り締まる絶滅特殊部隊(アナイレート・フォース)に志願しようと決意を固めた。ちょうど最低年齢が十五歳だった。ただ、指定された身体の部位(パーツ)への機械(アーマード)化が絶対条件となっていた。


 拒否する理由は見当たらなかった。さらにもう一つの絶対条件である異能の力を持っていることも難なく合格(クリア)した。それから、現在に至る。


 眠気眼で歯磨きを終えると、コーヒーを入れてからテレビのニュース番組を入れた。


 ちょうど特集番組が組まれ、昨晩の強盗殺人事件が大々的に報道されていた。


 驚愕すべき点は一夜の間に同様の事件が合わせて八件も発生したことだ。その上、狙われた全ての被害者がこの巨大都市(メガシティー)を統括・管理する汎用人工知能(AGⅠ)である渾沌(こんとん)の女神エリスの義脳(ぎ のう)を設計した八人の天才脳科学者の末裔だった。さらに付け加えると、奇跡的に生き延びた一人の重傷者を除いて、生存者は一人もいなかった。


 現在AGIは制御プログラムと言う拘束によって休眠期(サスペンド)にあり、半ば強制的に人類の平和と安寧を最大限に重視したシステムに準拠している。


 それは渾沌の女神というよりは慈愛の女神と呼ぶべきかもしれない。ただ、この八人の天才脳科学者がそれぞれ隠し持っていたものを組み込むことで活動期(プロシード)に移行する。それが偶然にもパルマンが入手した特殊な組み込み式内臓ストレージ――PUDである。


 活動期のAGⅠがどんな行動を取るのかは分かっていない。それでも、天才脳科学者たちがそれを実行しなかったのには何か危険な要因があると思われた。


 中年の男性キャスターが今回の事件に関与した組織からの犯行声明文を読み上げた。


『我々は、我々の崇拝する全知全能の女神エリスを真に覚醒させる大義のために今回の革命を起こした。この正義の行いを妨げようとする者は例え何者であろうと全員抹殺する』

 ある種の狂信者めいたこの集団は自分たちの行動を正当化したいようだが、視聴者の理解を得るには無理な言い分に聞こえた。


 最後にそのキャスターはこの組織の名前を口にした。秘密結社《黄昏の粛清者(エピュラシオン)》と――。


 コーヒーを飲みながら番組を見ていると、不意にスマートフォンが鳴った。

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