二の矢
フレデリクスはそれなりに高級な二階建ての一軒家に住んでいたようだ。
夕暮れに差しかかる頃、二台の絶滅特殊部隊専用のエアヴィークルは目的の家の手前で停止した。
パルマン、ミハエル、アリシアの三人は正面から、ロマーディオとヴァネッサは裏手口から潜入を試みた。
あいにく鍵は持っていない。やむを得ずドアの鍵穴を銃で撃ち抜いて、侵入することにした。
先ほどのアリシアの言葉どおり、どうやら待ち伏せはされていないようだ。残る問題は罠が仕掛けられていないかどうかだ。
パルマンは玄関のドアから少し離れた位置で大口径のプラズマ銃を撃とうとしたとき、ふと鋭い嗅覚が油臭さを嗅ぎ取った。
「これは――!?」
危機感を感じた瞬間、それは起こった。おそらく、ロマーディオかヴァネッサのどちらかが裏手口の施錠を破壊したのだと想像できた。
フレデリクスの家から激しい爆発音が響き渡り、たちまち凄まじい業火に包まれる。やはり入念な罠が仕掛けてあったのだ。
「チッ、またしてもやられた!」
これでは何一つ証拠らしき物は入手できないだろう。無論、それよりも今はやるべきことがあった。
「二人のところに行くぞ!」
パルマンは大口径のプラズマ銃を腰のホルスターに戻してから、全力で家の裏手を向かって駆け出した。近所の住人がやっているかもしれないが、救急隊への連絡も忘れない。
燃え盛る紅蓮の炎と濛々と充満する黒い煙に阻まれながら裏手口に回ると、ロマーディオとヴァネッサは爆風の衝撃で吹き飛ばされ、仰向けに倒れていた。幸いにも、しっかりと呼吸はしていた。
どういう魂胆で罠を仕掛けたのかは不明だが、爆死するほど破壊力の高いものではなかったようだ。もしかしたら、爆発で、最後のPUDが破壊してしまうのを恐れたのかもしれない。
「おい、ロマーディオ、目を開けろ!」
パルマンは気絶したロマーディオを抱きかかえると、頬を軽く数回叩いた。剥き出しの顔や手に複数の擦り傷を負っていた。
ヴァネッサにはアリシアとミハエルが救助を行っている。そのとき、複数の人の気配を感じ取った。戦闘服を着た秘密結社の手下たちだ。
パルマンたちの周囲を囲むように歩み寄って来る手下たちは十人ほどいた。既に瞑想状態になっている。ただ、リーダーらしき人物も殺戮機兵も見当たらなかった。
フレデリクスが死んでから、まだそれほど時間も経っていない。完璧な準備を整えるだけの猶予がなかったと推察できた。
ロマーディオとヴァネッサは依然として意識を失ったままだ。この場は三人で戦わなければならない。
(またか! また後手に回ったのか!)
パルマンたちは沸々を湧き上がる憤激に支配されようとしていた。
「ここは俺たちだけで戦うぞ!」
それだけ言うと、即座に砕珠と呼ばれる氷天の力を宿らせた二本の小剣を召喚した。そのまま秘密結社の手下たちに向かって駆け出していく。明らかに冷静さを欠いていた。




