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ブラッドサースティヴィーナス  作者: 檜鶯盈月
第2章 仕組まれた罠
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ジュリアナからのメール

 メールの件名は『パルマン、ゴメンね』だった。さらに本文にはこう書かれていた。



   愛しのパルマンへ。


   うちの両親の不躾(ぶしつけ)な態度をどうか許してね。別に悪意があるわけじゃないの。


   今、私は自分の部屋に閉じ込められてるけど、心配は要らないわ。こんな場所出ようと


   思えば、いつだって抜け出せるんだから。


   それよりも、あなたのことがとても心配。ニュースであなたが傷を手当てしてる場面が


   映ったときには思わず心臓が飛び出そうだった。


   そのとき、思ったの。私も何か力になれないかなって。


   私だって世界民間保護団体(WCPO)の一員だもの。絶対にあなたの役に立って見せるからね。



 最後の一文がとても気になった。先ほど抱いた不安は的中していた。


 ジュリアナを自宅まで送った後、この事件には関わらないように念は押しておいた。素直に言うことを聞くほど従順な女性ではないのを承知の上で、だが――。


 秘密結社の連中はいつどんな手段を仕掛けてくるのか分からない用意周到で残忍な相手だと身を持って思い知らされたばかりだ。


 自分は無事だから変な真似はしないでくれ、と短い文面を返信するしかなかった。


「やっぱり来てたみたいね。ジュリーのことだから、一人で動き出したんじゃない?」

 面白半分にアリシアが訊いてきた。


 二人は性格が似ているせいか、物凄く気が合うようだ。


「ああ、そのようだ」

 とても不安そうにパルマンは返した。


「そんなに心配することないわよ! 彼女、やるときはしっかりとやる子だから!」

 そんなことは言われるまでもなかった。だからと言って、心配が拭い去られるわけではない。


「ジュリーは頭脳明晰だし、どこまでが危険かどうかの境界線(デッドライン)もちゃんと見極められる優秀な調査員だ。彼女に限って無茶な行動はしないと思うけどな」


 パルマンとジュリアナが巡り合ったときの事件にミハエルも関わっていた。自分と同い年でありながら、彼女の調査員としての類まれなる資質を高く評価していたのを覚えている。


(それはそうだが――)

 心から愛しているだけにそこまで楽観視はできない。余計に気が気ではなかったし、不安が募る一方だ。


「目的地まで後どれぐらいかかるんだ?」

 パルマンは気持ちを紛らわそうと誰にでもなく訊いた。


「だいたい四十分ってところね」

 アリシアが女の子らしい腕時計を見ながら答えた。

「まだかかるな」

「着いたら、嫌でも忙しくなる。この貴重な移動時間に体を休めておくんだな」

 ここはミハエルの言葉に大人しく従うことにした。


 今まで以上に一秒でも早くこの事件を解決したかった。

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