燻る疑心
指令室に戻ると、絶滅特殊部隊の隊員たちが勢揃いしていた。
ロマーディオとヴァネッサも長い二本の牙を生やした善悪二面性を持つ神獣の顔をトレードマークにした制服に着替えていた。
パルマンと一緒にボルファルトも現れたことに、一同は背筋を伸ばして起立した。
「みんな、気にせずに座ってくれ。食事中の者は食べ終わるまで寛いでていいぞ」
ボルファルトは場を和ませるように柔らかな口調で言った。
パルマンは足早に自分の席に着くと、ほとんど使うことのないデスクに置かれたファーストフード店の紙袋を開いた。中には頼んだとおりのサンドイッチとプライドポテトにコーヒーが入っていた。
全ての食べ物をデスクの上に取り出してから、包みを持ちながら具材のたっぷりと詰まったサンドイッチを頬張る。今朝はベーコンエッグトーストを一枚食べただけだったので、とてもお腹が空いていた。
食べることに夢中になっていたパルマンは十五分もかからずに全てを平らげた。後は残った――プラスチック素材の一切使われてない――ゴミを捨てて、席に戻った。もう準備は万端だ。
それから数分後、全員の目の前にボルファルトが立った。
「さて、そろそろいいかな?」
その言葉で指令室に瞬時にピンと張り詰めた。すると、待っていたかのように巨大画面には担当部署の違う数人の分析官の顔が映し出された。
最初に隊員たちから報告がされた。ロマーディオたちは《メーティス》という盗諜屋からの情報を、パルマンたちはストリートギャングが経営していた酒場の件から先ほど起きた戦闘の発端までを話した。
最後にボルファルトが長官の護衛で貧困区とも無法地帯とも言われるメルロアドリオ地区に行ったことを告げた。だが、長官がそこで何をしていたかは全く分からなかったようだ。
「なぁ、パルマン。長官から返された例の内臓ストレージは本物だったのか? まさか偽物とすり替えられたわけじゃねぇだろうな?」
隊員全員を代表するかのようにロマーディオが口に出した。
誰もが長官の行動を不審がった。何故大事な物をそんな場所に持って行ったのか、謎でしかなかったからだ。
「それはまずないと思うな」
「どうしてそう言い切れるんだ?」
まるで見通したかのように言うパルマンにロマーディオは食ってかかった。
「これと寸分違わない物をそんなにすぐに作れるとは思えないからさ。それに、これのために貧困区に出かけたかどうかだって分からないだろう? 何か別の目的があったのかもしれない」
今の話はあくまでも仮定の話だ。
貧困区に戻ってからすぐにPUDの入ったケースを返した以上、長官の目論みは成功したのだと内心は思っていた。とは言え、自分の上司を疑うのは個人的に筋が違うと感じたまでだ。
少しの静寂が訪れた。
(この話題を変える必要があるな)
パルマンがそう思ったときだった。




