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ブラッドサースティヴィーナス  作者: 檜鶯盈月
第2章 仕組まれた罠
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二の轍は踏まない

「どうしてだね? これだけ言ってもダメかね?」

 ランドロスはとても不満そうな目で睨みつけている。


「長官は安全な場所と仰いましたが、自分はこの巨大都市にそんな都合のいい場所があるとは思えません。目的のためならば、街すらも消し飛ばす覚悟を持った連中です。例え、どれだけ頑丈な場所に隠したとしても、血眼になって見つけ出してしまうでしょう。そうなったときに絶対に守り切れると断言できますか? それなら、自分の手元に置いておきたいです!」

 きっぱりと言い放ったパルマンに、ランドロスはしばらくの間思案顔だ。


「ふむ。君の意見を覆すだけの確固たる場所も万全の対策も見つからないか。ただし、事件が解決するまでの間、本部内にある緊急時のための一時滞在施設に泊まってもらう。これは提案ではなく、命令だ。理由(わ け )を聞きたいなら説明するが、必要かね?」

「いいえ、必要ありません」

 わざわざ聞くまでもなかった。


 用意周到な秘密結社のことだ。既に自宅を見張っている可能性が高い。


 ここまでの戦いで連中は悲願成就のためならば、どんな手段をも(いと)わないと身を持って思い知らされた。さすがに、一人のときに襲撃されでもしたら、この内臓ストレージを守り抜けるとは断言できない。だが、本部なら相手もそう簡単には手を出せない。長官はそう言いたいのだろう。


「他に何かご命令はありますか?」

「いや、これ以上はないよ」

「では、失礼させてもらいます」

 パルマンは一礼して、長官室を出た。それに続いて、ボルファルトも退出した。


「さっきのことは気にするな。長官もお前の覚悟の程は理解してくれたさ。後はお前の好きなようにすればいい。長官にはここで寝泊まりしていたことにしておく」

 ドアが閉まると、ボルファルトは長官に思うところがあるのか、気遣ってくれた。


「ありがとうございます、隊長。でも、俺は別に大丈夫です」

 自分が持っている物の重大さを(かんが)みれば、当然の処置だと割り切った。


「ならいいが――」

 ボルファルトもそれ以上口を挟まなかった。そのまま二人はエレベーターホールに向かっていった。


「昼飯はもう食べたのか?」

「まだです。でも、ミハエルたちに買って来てくれるように頼んでいます」

「じゃあ、一緒に指令室に行こう」

 二人はエレベーターのドアが開くと、中に入った。


 何はともあれ、ガリエラから託されたPUDが手元に戻ったことに安堵した。ただ、長官に大言壮語した手前、命に代えても奪われるわけにはいかなくなった。


(今度こそ俺らが先手を取ってやる!)

 これ以上謎の秘密結社の掌の上で良いように操られるのはご免だ。そんな強固な決意を胸に刻みつけた。

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