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危険な眼差し

「おい、そろそろ観念して例の物の隠し場所を吐いたらどうだ? さっきから同じことを繰り返し言ってるが、それさえ手に入れば、俺たちはすぐにずらかるって言ってるんだぞ。お前の命まで取る気はねぇんだ。だが、あんたがまだ抵抗し続けるつもりなら、もう片方の足も斬り落とさなきゃならねぇ。なぁ、俺にこれ以上(むご)い真似をさせねぇでくれよ」


 声からして襲撃者のリーダーはまだ若い男のようだ。とは言え、油断はできない。熟練した手下たちを指揮するだけの手練れと見るべきだろう。


 それにしても、あまりにも演技が下手くそ過ぎた。間違いなく出まかせだと分かる。


「な、何をされようが、あれの保管場所をお、お前らなんかに言ってたまるか!」

 拷問による激痛に耐えながら、ガリエラは気力を振り絞って提案を拒絶した。その勇気ある発言が自分の命を縮めることも覚悟の上に違いない。


 襲撃者たちはとっくに邸宅内を隈なく調べ尽くしたはずだ。それでも、お目当ての探し物は見つからなかった。だからと言って、手ぶらでは帰れないというわけだ。


「仕方ねぇな。もう片方の足も斬り落とせ!」

 苛立ちを剥き出しにして、リーダーの男が命令を下した。


(既に切断されたほうの足は止血されてると思うが、これ以上大量に出血すると、ガリエラの命が危ない。この状況下ではこっちから打って出るしかないな)


 状況的にはこちらが不利だが、何か手段を考えるしかなかった。


 電動チェーンソーの耳を(つんざ)く音が鳴り響く。即座にパルマンは小剣を消滅させ、壁を二回ほど力強く叩いた。


「おい、チェーンソーを止めろ! 今、何か音がしなかったか?」

 上手くいったようだ。リーダーの男の怪しむ声が聞こえてきた。


「まだ使用人がどこかに隠れていたのかもしれませんね」

 手下の一人が返事をした。


「それは好都合だ! この野郎をいくらいたぶっても口を割りやしねぇからな。その使用人の命と引き換えに吐かせてやる! お前ら、早く連れて来い!」

「や、止めろ!」

 ガリエラは悲痛な声で叫んだ。明らかに焦燥感を(にじ)ませている。


 ホルスターから大口径のプラズマ銃を抜いて身構えるパルマンのほうに向かって手下たちが足早に駆けてきた。


 まずは最初に姿を現した手下の顔面目がけて凄まじい威力の蹴りを喰らわせる。


 強烈な一撃で呆気なく気を失った仲間にぶつかられた背後の手下は勢いで後頭部を壁に打ちつけ、その衝撃で二人とも床に崩れ落ちた。


 パルマンはすかさず驚異的な速度で二人に向かって引き金を引いた。プラズマ粒子の銃弾は見事に命中し、手下たちはそれぞれの戦闘服の左胸を赤々と染めて絶命した。


 間髪を入れずに部屋に続く廊下に躍り出ると、現状を掴めてない三番目の手下にもプラズマ粒子の弾丸を撃った。


 またもや左胸から血が飛び散り、息絶えた三人目は通路に倒れた。


 パルマンは機械化で強化した足で部屋に飛び込むと、異変に気付いたリーダーと(おぼ)しき男に銃口を向ける。中には、電動チェーンソーで拷問を任されていた手下もいた。


「二人とも、両手を高く上に上げるんだ! 早く!」


 襲撃者たちは突如現れた相手がまだ少年であることに驚いている様子だ。


「早くしろ!」

 臆した拷問役の手下はすぐに命令に従ったが、右の頬に大きくZの文字のタトゥーを入れたリーダーの男は少しも動じずにこちらを睨みつけている。Zは最強とか究極の意味を持つ。


「こんなガキにしてやられるとはな!」

 床に唾を吐きながら、まだ二十代後半の男は心底悔しがっていた。


「手を上げないなら、殺すぞ!」

「フン、威勢のいいガキだぜ! いずれ俺の仲間がお前を――」

 それ以上話を続けるのは無理だった。ある恐怖に駆られたパルマンが大口径のプラズマ銃を撃ったからだ。さらに手を上げて怯え切っている手下も撃ち殺した。


 ある恐怖とは襲撃者のリーダーの意味深な言葉に端を発したものだった。

 今は機械化手術が盛んな時代だ。もしかすると、リーダーの男の眼球を通じてパルマンの姿などの情報(データ)が襲撃者のアジトに転送されたかもしれない。


「パルマン、よ、よく来てくれた」

 ガリエラの言葉に、パルマンは我に返った。すぐにガリエラを縛りつけていた拘束具を取り外してやる。残念ながら、左の足首は無残に斬り落とされていた。今後は杖か車椅子が必要となるだろう。


「お前に話しておきたいことがある。耳を貸してくれ!」

 ガリエラは自分の命に代えても守り抜いてきた物の隠し場所とそれの使い道について教えてくれた。全てを言い終わった後、安堵したように気を失った。


 突如遠くから幾つものサイレンの音が聞こえてきた。


 窓から覗くと、回転灯を光らせながら、複数の都市警察(シティーポリス)の装甲車両がこちらに向かって来ていた。

(あの中に救急車もいれば、幸いなんだが――)

 まずはスマートフォンで自分が所属する絶滅特殊部隊(アナイレート・フォース)の隊長に連絡を入れた。次いで、襲撃者たちが探し求めていた物を持ち出すと、余計な嫌疑をかけられる前に姿を消すことにした。


 ただ、この襲撃事件はほんの幕開けに過ぎなかった。

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