鬼気迫る行為
「パルマン、まさかPUDはまだコインロッカーの中だとは言わないよな?」
「それだが、察しのいいあんたの言うとおりで、まだあそこに入れたままだ」
この不利な状況を乗り切るためにパルマンはハッタリを言った。ここで持っていると言ったとして、見せろと言われたら万事休すだからだ。
「なんて能天気な奴だ。それで、キーはどこにある?」
「それは俺が持っている」
ここは嘘を信じ込ませる必要があった。見破られないように自信を持って口に出した。
「だったら、お前だけこっちに歩いて来い! おかしな真似はするなよ」
「別に構わないが、他の二人の解放が条件だ」
「パルマン、俺をあまり見くびるな。ゴルティモアと同じようにこの俺も上手く出し抜けると思ったら、大間違いだぞ!」
「条件を飲む気がないなら、さっさと俺らを殺して、都市中のコインロッカーをしらみ潰しに探し回るんだな」
「フッ、その命知らずの度胸を認めて、残りの奴らは解放してやる。だが、銃はそこに置いていけ」
「それはいいけど、あんたたちも全員銃口を下に向けてよね! それが解放の条件よ!」
ここに来て、アリシアが割って入った。
「クッ、揃って生意気なガキどもだ。お前ら、銃を下ろせ!」
フレデリクスはやむを得ず命令を出した。
一斉に赤外線スコープのポインタが三人から外れた。その一瞬の隙を見過ごすパルマンたちではなかった。 フレデリクスの誤算があるとしたら、改造人間の動きがどれだけ鋭敏なのか、知らなかったことだ。
パルマンは瞬時に大口径のプラズマ銃を手に取ると、フレデリクスの左の太腿を狙って引き金を引いた。ゴルティモアのときとは違って、この男を捕まえる算段だった。
「後ろを頼んだ!」
既にミハエルとアリシアはそれぞれの銃を手に取っていた。そのまま背後にいる手下たちに銃弾を喰らわせる。
三人の常人離れした素早い動きについて来れず、フレデリクスは負傷し、手下たちは唖然としたまま怯んだ。その隙に手前の手下を一人、背後の手下を二人始末した。
「よくもやってくれたな! お前ら、早く瞑想状態になれ!」
負傷したフレデリクスは目の色が変えて、傷ついてうずくまる手下たちに命令した。
その命令を聞いた手下たちはすかさず上着のポケットから注射器を取り出し、次々と自分の首元に刺した。そのまま中に入った液体を体内に流し込む。まさに鬼気迫る行為に思えた。
「あいつら、何をしてるんだ?」
異様な光景を目にしたミハエルが気味悪そうに呟いた。すると、生き残った手下たち全員が次々と地面に倒れ込んだ。三人とも空恐ろしさを感じるとともに危険な臭いを嗅ぎ取った。
(あの男は情報源になる。今殺すわけにはいかない!)
パルマンは大口径のプラズマ銃の照準をフレデリクスに合わせるのを躊躇った。
「二人とも、伏せて!」
突然アリシアが危機感に満ちた叫び声を上げた。三人とも反射的に地面に伏せる。
紙一重の差でその頭上を途轍もない速度で数発の電力弾が過ぎ去り、コンクリートの地面や周囲の建物の壁や激突する。
周囲に激しい轟音が響き渡った。凄まじい威力に建物の壁は粉々に砕け散り、地面は大きく抉り取られた。もし全ての機体が撃っていたら、この周囲は粉々に砕け散ったはずだ。
「何だ、今の兵器は――!?」
雷迅砲という名の破壊兵器を見たことがなかった。
「お前、この街を破壊する気か!」
立ち上がったミハエルは憤激を露わにした。
「お前たちが抵抗する限り、街の一つや二つ消し飛んでも仕方あるまい。それに、まだこれで終わりではないぞ。さぁ、そろそろ起きる頃合いだ」
フレデリクスの話が終わった直後、少しの間地面に寝そべっていた手下たちがムクッと起き上がり出した。その姿は異様だった。




