仕組まれた罠
『ちょっと待って! マルケスタたちが急に足を止めたわ! この監視カメラからだと良くは見えないけど、誰かに呼び止められたみたい。大通りには向かわずにそっちに向かっていくわ』
「おい、ベリンダ、そっちってどっちだ?」
パルマンが声を荒げる。まだ運はこちらに味方している。そう思いたかった。不意に近くで若い女性の悲鳴を聞くまでは――。
「向こうだ!」
ミハエルは銃身の長い二丁のプラズマ銃の一丁で行く先を差しながら駆け出した。すかさずその後を追う。
何が起こったかは分からないが、悲鳴を上げた若い女性は全身をブルブルと震えさせながら地面に座り込んでいた。
道の先には、ネイビーチェックのスーツを着た金髪のミドルヘアの男が立っていた。片方の手にレーザー光線式の拳銃を、もう一方の手にリモコンを持っている。
男のすぐ近くには二人の男が口から血を流しながら倒れていた。マルケスタとその仲間だとすぐに分かった。
怖がる若い女性をミハエルが立たせてその場から逃がす間、パルマンとアリシアはその男に銃口を向けた。
「今すぐ銃を捨てて、両手を上げろ!」
「威勢がいいな、餌に食いついた野犬たち。これを見ても、強気でいられるかな?」
不意に謎の男の周りに五人、背後からも同じ人数の手下たちが現れた。全員戦闘服を着ていた。
両手にはレーザー光線式マシンガンを構えている。さらに上空には機体の下部に大砲を搭載した八機の武破雷光型の殺戮機兵が二対四枚の羽根を羽ばたかせて浮遊していた。
殺戮機兵に腕らしきものはない。大砲が唯一の攻撃手段なのだろう。
「俺は《黄昏の粛清者》のフレデリクス。パルマンだったな? 死にたくなければ、大人しく最後の内臓ストレージをこちらに寄こせ」
前回の一件を知っているのか、口振りに驕りはない。警戒しているようにも思える。
(待ち伏せとは上手くハメられたな)
挟み込まれる形で銃口を向けられている以上、抵抗する術もなかった。しかも、上空を飛ぶ殺戮機兵がどんな攻撃をしてくるのか分からないだけに不気味だった。
「みんな、銃を下に置くんだ」
赤外線スコープから照射されるポインタが三人の急所に当たる中、降参したように大口径のプラズマ銃を地面に置いた。PUDが手元にあれば、交渉の余地があったのだが、ないものは仕方ない。このときばかりは長官を恨んだ。
パルマンらしくない態度を不審に思いながらも、ミハエルもアリシアも銃を捨てた。
「ほう、神妙な心がけだな。そのまま手も上げてもらおうか?」
「分かった」
フレデリクスの言われるままに両手を上げた。
「おい、どうしたんだ?」
言いなりになるパルマンにミハエルが小声で問い詰めてきた。
「いいから俺を信じろ!」
押し殺すその言葉は何か奇策を秘めているように感じた。それに賭けるように残りの二人も手を上げる。
フレデリクスは何一つ抵抗しないパルマンたちを見て、不審な顔をする。ただ、この状況下では納得できなくもない。




