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ブラッドサースティヴィーナス  作者: 檜鶯盈月
第2章 仕組まれた罠
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強行突入

 ロマーディオとヴァネッサの二人から遅れること三十分弱。パルマンたち三人も自動運転の絶滅特殊部隊専用のエアヴィークルでバスタベリオス地区に到着していた。


 繫華街から少し離れたところでエアヴィークルは停止した。すぐに三人はドアを開けて降り立った。


 パルマンとミハエルはそれぞれのプラズマ銃を携行しているが、アリシアは近接戦では役に立たないスナイパーライフルを持って来ていない。その代わりに、レーザー光線式の拳銃(ハンドガン)をホルスターにしまっていた。


 突然街中に絶滅特殊部隊の制服を着た者たちが現れたことに周囲にいた人間は戸惑っているようだ。


「《ハンニバル》って酒場はこの先の裏手だな」

 パルマンが確認した。

「ベリンダ、私たちの声はちゃんと聞こえてる?」

 アリシアが担当の分析官(アナリスト)にマイクで話しかけた。三人ともイヤホンマイクを付けていた。

『バッチリ感度良好よ! 今監視カメラをハッキングして店内の様子を見てるけど、もう既に準備中のようね』


 ギャングの溜まり場と言われるだけはある。誰かしらいるのは願ってもない話だ。もし誰もいなければ、待っていなければならない。


 この時点で監視カメラは作動しているのは、店内の奥で何者かが店内を見張っているに違いなかった。

「店には何人ぐらいいるんだ?」

 今度はミハエルが尋ねた。

『全部で六人ね。でも、ボスのマルケスタ・ハボリの姿が見えないわ』

「それは困ったな」

 一番肝心の男がいないことにパルマンは舌打ちをした。


「その酒場は連中の溜まり場なんだよな? 監視カメラが作動している以上、店内の奥にいるのはそいつじゃないのか?」

「今回は私もミハエルに一票入れるわ。逆に、ボスがいないほうが口を割る可能性が高いかもしれないしね。(かえ)って好都合じゃない?」

 アリシアの言い分も一理あった。ここは詳しい情報を知る人間がいることを願うしかない。


「――分かった。いいか、この制服で店に入る以上、手ぶらでは帰れないぞ。何でもいいから確固たる情報を掴むんだ」

 パルマンの言葉に残りの二人は力強く頷いた。


 目の前の三階建ての人気のファーストフードの店から二街区(ブロック)先に目的の酒場はあった。


 秘密裏に麻薬や銃器の売買をするには打ってつけの場所と言えた。


 開け放たれたドアの上に飾られた店名のネオンサインにはまだ電光が灯っていない。


「よし、一気に乗り込んで店内を掌握するぞ!」

 パルマンの号令とともに意を決した三人は自分の銃を抜き、酒場内に乗り込んだ。


 開けっ放しのドアも幸いした。機械(アーマード)化による無音に近い俊敏な動きに、店員たちは誰一人としてこちらに気付かなかった。


「全員、動きを止めて手を上げろ!」

 パルマンの張り上げた大声で、店員の身なりをしたギャングの手下たちはやっと今の状況を把握したようだ。


 騒然として言いなりになる中、カウンターにいた男だけが指図に従わなかった。とても落ち着きを払った嫌な感じの男だ。首元に(さそり)のタトゥーを入れていた。


「これはこれは絶滅特殊部隊の方々がうちの店に何の御用でしょう? あいにくまだ準備中なもので、何もお構いできずにすみません。営業時間内にまたご来店を。ああ、当然ご存じとは思いますが、未成年の方はお酒を飲めませんけどね」

 嫌な感じの男はとてもふてぶてしい口調で嘲笑を浮かべた。


「悪いが、こんな辛気臭い店で飲む気は更々ない」

 負けずにミハエルは冷たく突っ返した。


「わざわざここに来たのは、お前たちのボスに聞きたいことがあったからだ。昔の仲間だったデランテ・オルグレンって男についてな」

「えーと、デランテまでは聞き取れたんですけど、苗字はなんでしたっけ?」

「オルグレンだ! 今写真を見せてやる!」

 ミハエルはその男に近づくと、デランテの顔写真を見せつけた。右の頬に大きくZの文字のタトゥーが入った顔は一度見たらなかなか忘れられないだろう。


「さぁ、見たこともないですね」

 嫌な感じの男は首を横に振った。

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