裏世界の女ボス
「これは絶滅特殊部隊のお二方、お待ちしておりました。ボスが奥でお待ちです」
警護役の一人が口を開いた。この男のほうが年上にも拘わらず、丁寧な言葉遣いだ。
「お、悪いな。それじゃあ、通らせてもらうぜ!」
ロマーディオは慣れた話しぶりで挨拶を交わすと、もう一人の護衛役が開けた頑丈なドアの向こうに足を進めた。ヴァネッサもそれに続く。眩い明かりが二人を出迎えた。
壁の色と同じく真っ白な通路は左右に分岐し、二十メートルぐらい先で奥に向かって直角に曲がっていた。
左側には十数人の頭脳明晰なハッカー集団からなる極秘情報集積室があり、反対側には入手した情報の裏取りを行う追跡者たちの仕事部屋がある。
追跡者はロマーディオ以外の絶滅特殊部隊の隊員と同様に機械化もしている。
通路はさらに奥に伸び、再び両方の通路が結ぶように直角に曲がってから《メーティス》のボスの部屋に通じていた。
左右どちらから行ってもボスの部屋にはたどり着くのだが、ロマーディオたちは右側を選択した。
数分ほど歩くと、ボスの部屋の前に来た。
ロマーディオはドアを二回ノックしてから「俺だ」と伝えた。
「入っていいわよ」
インターホンから若々しく、気の強そうな女性の声が聞こえてきた。それと同時に、ドアのロックを解除された音がした。
ドアを開けて、二人はボスの部屋の中に入った。広々としていて、とても綺麗だった。
高そうなビジネスデスクがあり、ノートパソコンの操作を止めた《メーティス》のボス――レヴィオラ・パラデュームが椅子の背もたれに全体重を預け、「いらっしゃい」と出迎えた。
金髪のロングヘアがとてもよく似合うモデル並みに美しい女性で、高級ブティックで売っている服を華麗に着こなしていた。だが、二人を見た途端に少し不機嫌そうな顔になった。その原因を二人は承知していた。
思考読破者という能力を持つヴァネッサのせいだった。レヴィオラは心を読み取られるのを酷く嫌っていた。
「なぁ、聞いてくれ、レヴィオラ。ボルファルトが俺ら二人をここに来させたのに深い理由はねぇ。あんたのところと違って、俺らは人員が少ねぇのは知ってるだろう?」
赤茶色の短髪を搔きながら、ロマーディオは言い訳をした。
「それは承知しているわ。ただね――」
「心配しなくてもいいよ。前にも言ったと思うけど、あんたを信じているから。ここでは力を使わないって約束する」
淡々とした口調でヴァネッサは言い切った。
少しの間、二人の女性は視線をぶつかり合わせた。数秒後、真面目に見つめるヴァネッサに根負けしたようにレヴィオラは大仰に両手を広げた。




