人質交換
「おい、いったいどういうつもりだ!」
「どうもこうもない。もし、あれを持って来ていたら、ここで俺らを始末するのは目に見えていた。だから、暗証番号でロックされるコインロッカーに置いてきたまでだ。あれが欲しいのなら、俺の恋人を今すぐ解放しろ。そうすれば、このキーもお前らに渡すし、ロックした暗証番号も素直に教えてやる。どっちみち手に入るんだ。悪い話ではないだろう?」
「生意気な! それがただのハッタリでないとどうやって証明するつもりだ!」
ゴルティモアは当然の反応を見せた。言われるままに取引をするつもりはなさそうだ。
「俺はあんたの指示どおりに一人でやって来た。絶滅特殊部隊には何も知らせてない。言葉を換えれば、あの内臓ストレージがどうなっても、あんたらと俺しか行方を知り得る人間は存在しないわけだ。物をコインロッカーに隠したのは飽くまで俺と恋人が無事に生き延びるための保険だ。それ以降のことは何も関与しない。後はあんたらの好きにすればいい」
パルマンの話は半分事実だった。ここに来る途中でPUDはコインロッカーに置いてきた。
もちろん、手抜かりはない。とっくに隊長たちには連絡してある。だから、このキーを渡すわけにはいかなかった。
「……よし、今からこいつが人質を連れて行く。引き換えにそのキーを渡せ! その後でお前にはコインロッカーの場所まで案内してもらう。いいな?」
「まぁ、仕方ないな」パルマンはしぶしぶ条件を受け入れる振りを演じてみせた。
「ただし、条件がある。恋人の口を塞いだテープも剥がしてもらおうか?」
「ガキのくせに減らず口を叩きやがる! おい、剥がしてやれ!」
ゴルティモアは側近に命じて、人質の口に貼り付いたガムテープを取らせた。
ようやく話せるようになったジュリアナは「この拘束具も外しなさいよ!」と側近に激しく詰め寄った。
「本当に勝気な女だ。構わん! 外せ!」
投げやりな態度でゴルティモアは人質の要望を受け入れた。どっちみちパルマンが要求してくると思ったのかもしれない。
側近に手錠を外されたジュリアナは痛そうに手首を擦っていた。
「これ以上の譲歩はない! さぁ、取引だ!」
許容範囲内の妥協は全てやった。そう言いたげなゴルティモアにパルマンは「分かった」と頷いた。
「言っておくが、取引が成立するまでは人質に銃口を向けてるからな!」
それくらいのことはわざわざ聞くまでもない。
二十メートルほどの距離をジュリアナはゆっくりと歩き始めた。その後をレーザー光線式の拳銃を向けながら側近が着いてくる。
静寂に包まれる中、二人の足音だけが倉庫内に響いた。不意に拘束具で縛られていた両腕を擦るジュリアナとパルマンの目が合った。その直後だ。




