表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/21

不穏な空気

 時刻は夜の九時に差しかかろうとしていた。等間隔で配置された街灯が閑静とした住宅街を(ほの)かに照らしている。


 ここは富裕層の豪邸が軒を連ねるレオンネクサス地区。道路から少し浮いた低空を濃紺色(ダークブルー)のスマートなフォルムをした空飛ぶバイク――エアストームが走行している。


 操縦桿を慣れた手つきで運転しながら、パルマン・エバーキースは目的の家に向かっていた。


 これから会う約束をしている男の名前はガリエラ・サザーランド。パルマンの自身の神経や感覚を自由自在に操る――知覚制御者(パシーヴァー)としての能力に興味を持った脳科学者だ。


 歳は四十代前半だが、この分野における知識と研究意欲は他者の追随を許さなかった。


 何しろ彼の先祖であるジェラールという人物は、この巨大都市(メガシティー)テンブルムを統括・管理する汎用人工知能(AGⅠ)――渾沌(こんとん)の女神エリスの義脳(ぎ のう)を設計した八人の天才脳科学者の一人だ。


 ガリエラはその偉才の血をしっかりと受け継いでいた。


 AGIとは人間と同等以上のありとあらゆる知的作業を理解し、学習し、実行できる極めて優れた人工知能(AI)のことだ。



 ガリエラの住む邸宅に近づくにつれ、パルマンはちょっとした異変を感じ取った。何故かは分からないが、二階の一部屋しか明かりが点いてないのだ。

 パルマンはいったんエアストームを停止させた。


 まだ十七歳という少年ながら、全身の一部を機械(アーマード)化した改造人間(レプリカント)のパルマンは、全神経を集中させると、能力を使って視界を熱源探査モードに切り替えた。すると、ガリエラの邸宅の敷地内を警戒しながら歩く得体のしれない複数の人間の熱源反応を見て取れた。


 ざっと見たところ、向かってこちら側には六人ほどいる。

 邸宅には幾つかの警報装置が設置されているはずだが、全て遮断されたようだ。


 身動きから推測すると、全員が両手に銃器を持っているのが見て取れた。高度な特殊訓練を積んだように機敏で隙がない。



 邸宅内は電灯の点いた二階の一部屋だけに熱源反応が集中していた。軍人のように直立不動のまま立っている複数の人間と、椅子に腰かける二人の人間を確認できる。


 二人のうち、だらりと力なく座る人間だけが熱源反応が低かった。これまでの経験から判断すると、何らかの理由で傷を負い、大量の出血をしているようだ。


 この状況下でまだ生き残っている人間がいるとしたら、ガリエラ本人の可能性が高い。


(あの熱源をガリエラだとするなら、連中はただの金銭目当ての強盗ではなく、あの家にある何かを狙って押し入った。だが、まだ見つかってないようだ。おそらく、ガリエラは探し物の隠し場所を吐かせるために拷問を受けている可能性が高い。早く助け出さないと、口を割った途端に消されるな)


 冷静沈着なパルマンは瞬時に今の状況を整理し、素早く行動に移った。


 エアストームから降りると、腰のホルスターから大口径のプラズマ銃を抜く。今度は視界を暗視モードに切り替えて、ガリエラの家の壁まで常人離れした俊足でほとんど足音を立てずにたどり着いた。機械化によって成し得た技だ。次いで、二メートル以上の高さの壁に向かって跳躍する。


 気配を消しているため、まだ襲撃者たちには感づかれていない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ