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第2話:不審な中毒事件と侍医アールの影

午後の光が薄く差し込む薬局で、紡葵は棚を整理していた。

「今日も静か……かと思ったら」


カウンターのベルが鳴る。小柄な少女が駆け込んできた——顔は蒼白で、唇が微かに紫色に染まっている。


「えっと……私、フルーツを食べたら気分が悪くて……」


紡はすぐに椅子を引き、水を注いだ。観察眼は自然と症状を拾う。

「落ち着いて、呼吸を整えて。どのくらい前に食べた?」


少女は震える手で答える。食べたのは王都の市場で売っていた見慣れない果実らしい。紡は唇を引き締め、カウンターの小さな薬箱から軟膏、解毒用の液体を取り出す。


「量と種類を確認しないと、安全に処置できない。口に入れたのはどのくらい?」

少女の答えを聞くと、紡は頷き、淡々と処置を開始する。


その時、薬局の扉が再び開いた。身長の高い青年——黒い髪に整った顔立ちの男が入ってくる。

「紡葵さんですね? 王府の医師、アール=フェルクです」


紡は眉一つ動かさずに見返す。

「医師……? なぜこの薬局に?」


「原因不明の中毒事件が増えていて、王都でも調査を始めたところです。あなたの処方方法が効くと聞き、直接確認に来ました」


紡は心の中で軽く舌打ちした——自分のやり方は現場での観察と経験がすべて。王府の理屈に従う必要はない。だが、無駄に敵対する理由もない。


「なら、協力しましょう。症状と摂取量を見れば、次の処方は決まる」


アールは軽く頷き、紡の横で記録を取り始めた。

「……確かに、あなたの判断は迅速です。市販薬の知識をここで応用するとは、予想外でした」


紡は小さく息を吐き、再び少女に向き直る。

「さあ、少しだけ我慢して。この液を飲んで、軟膏を塗る。症状が安定すれば、後は経過観察で十分」


数分後、少女の顔色は徐々に戻り、呼吸も落ち着いた。

「助かりました……本当に、ありがとうございます」


紡は淡々と微笑む。

「薬は効く。だけど、過信は禁物。原因を見極めることが一番大事」


アールはその様子をじっと観察していた。王府の医師として、彼もまた、この小さな薬局の力を認めざるを得ない。

そして二人の間に、初めての協力関係——観察と知識の“調合”——が静かに芽生えた。


だが、王都の影では、より大きな毒の影——王府内部の陰謀——が確実に動き始めている。

紡葵はまだ気づかない——自分の調合する薬と、知らぬ間に調合される王都の“秘密”の交差点に巻き込まれていくことを。

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