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第1話:王都の小さな薬局、初めての中毒事件

店のベルが小さく鳴った。午後の薄い光が棚の薬瓶に反射し、色とりどりのラベルが揺れる。


紡葵は手を止め、客の顔色を見た。若い男——頬は青ざめ、瞳の色が少し浅い。典型的な“初期中毒”の症状だ。


「まずは、落ち着いて。ここに座って」

紡は無表情に水を注ぎ、カウンターの引き出しから小さな綿球とアルコールを取り出す。どんなに魔法のある世界でも、人の体の反応はそうそう違わない。聞き取り、観察、量を把握する——処方は現場で決まる。


「森で拾った果実を食べました」

男の告白は短く、震え混じりだった。


唇を引き締める紡。果実の毒は、見た目で判断できることもあれば、決してわからないこともある。だが、薬はいつだって真実を教えてくれる。


「大丈夫、効く方法はある。まずは水分をしっかり取って、解毒用の軟膏を塗る。そして……」


紡が手際よく処置を進める間、男は次第に呼吸を整え、顔色も戻っていった。魔法ではなく、観察と知識で人を救う——それが紡葵の信条だった。


「あなたの体に合う形で、毒を中和する。過程も薬も、間違いはない。」

その言葉に、男はようやく小さく頷いた。


外では王都の噂話や小さなトラブルが日々動いている。だが、紡の目はすでに、次の事件——王府の陰謀の匂い——を捉えていた。

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