六話 林道の戦い
「とりあえずこれでいいか……」
私はギリギリ互いを視認できる距離までニーナと離れ、林道に面する林を越え街を目指して行く。
お互い魔法で作り出したパーカーを着てフードを深く被って少しでも姿を隠す。
御者のお姉さんはまだこちらに追いついていない。
――十分程前。
奇声を挙げた後カッターナイフを生成して自分の首に当てながら叫んだ私を見てお姉さんは目を見開き驚いた顔をしながら硬直していた。
その後、止めに入ろうとしたお姉さんに創造魔法で生み出した布団を覆い被せ、発狂しながら馬車から飛び降り脱走し叫び続ける私とそれを追いかけ止めようとするニーナ……という演技をしながら林の中へと飛び込んで行った。
それから道を妨害するようにフェンスを背後へ生成しつつ自転車で走り続けて――何とか追いつかれずにここまで来れた。
更にニーナが水魔法を使い林の中に白い霧を発生させてくれたので、暫くは追ってこれまい。
……何だか上手く行き過ぎて逆に違和感があるが、わざと見逃してくれたのだろう、か。いやまさかな。まあいいや。
木々の上から見える高い建造物を目印に林を抜け、そこから真っ直ぐ続く細い道が見え、街への案内看板が立っている。
ニーナと距離を取りながら真っ直ぐ進んで行き、何処かは分からないが街の中へと出た。
無事に林から抜け出し、張り詰めていた緊張感が解けホッと一息ついた。
しかしゆっくり休んでいる暇は無い。
今も敵――ジュナと呼ばれる女は騒ぎを聞きつけ私達を追いかけて来るはずだ。
私が正気なのがバレたらヤバい……見つかる前にどこかへ身を隠そう。
あと、私がこの街に来た事を遠回しにでも伝えられる手段……敵には違和感を持たれない範囲で。
スマホは色々な意味で使えないし目立つ目印を設置したり手紙をばら撒いたりとかは駄目だし。
衛兵に伝言を頼むか……
「――閃いた」
超天才的発想――いや調子に乗りすぎた。別に天才じゃない。
なるべく自然な様に、それでいて衛兵さんから迅速に情報が広がりそうな手段。
グランヘルム家襲撃から軍の警戒も強まっているし、あの家に住む人間に何か緊急事態が起これば直ぐに情報が都市全体へ広がる様な対策がなされているらしい。
さっきまでの演技の続きだ。私の発狂を緊急事態として衛兵に伝えれば良い。
敵にも伝わるだろう諸刃の剣だが、私は味方の方を信じる。
ノートに次の作戦を書き込み、無言でニーナに近寄りその内容を見せる。
彼女はビックリした顔で私と目を合わせた後、無言で頷いてくれた。
ただの一般人であるニーナから衛兵に伝えてもらい緊急事態として迅速に拡散してもらう。
そして私達は息を潜めてどこかに身を隠し時間を稼げば良い。
用意周到なやり方からして相手はたぶん無駄な事はやらない慎重派……私を探す為に街中で虐殺して回るなんて早まった事はしないだろう。
そんな後先考えない手段を取る様な相手なら始めから、家に真正面から突っ込んで来ると思う。
さて、敵に見つかる前に作戦開始だ。
「あの、衛兵さん、聞いてください」
ニーナから私の事を衛兵に通報してもらい、伝え終えたら二人でなるべく距離を取りつつ人気のない場所を目指して進む。
街の構造に詳しいニーナについて行きながら人波の中を黙って歩き、大通りから外れる。住宅や建造物の立ち並ぶ路地裏へ続く道に足を踏み入れた。
周囲に誰も居ない事を確認しながら薄暗い路地裏を歩いて行き――五分。ちょうど良さそうな建造物を見つけ、見上げる。
「……」
二階の住宅に挟まれた一階建ての住宅。隠れるのにちょうど良さそうだ。
「無断でお邪魔することを許してください」
脳内で住宅の住民に謝罪しながら周囲を見渡して、創造魔法を使う。
淡く光り、地上から一階建て住宅の屋根までまたがり顕現したのは階段――グランヘルム家で毎日昇り降りしている、木の階段。
もう一度頭の中で謝罪しながら二人で階段を昇り、屋根の上へと失礼する。
その後ニーナに水魔法の水球で木の階段を破壊してもらい、ついでに水流で木片をバラバラな方向に流してもらった。
見つからないための証拠隠滅だ。
時間が経てば自然消滅するが、念の為。
そうしてなるべく足音を立てない様に屋根の上を歩いて行き、真ん中辺りで二人立ち止まり、静かに座り込んだ。
『はあぁ〜〜……っ』
と大きく息を吐きたいところだが、まだ駄目だ。
声は厳禁。何を聞かれるのか分からない。
ニーナは疲労が濃い表情をしている。たぶん私も同じ様な顔をしているだろう。
しかし、二階建てに挟まれた住宅の屋根のど真ん中。
ここならば、空か巨大な建造物から見下ろさない限りはバレないだろう……バレないでほしい。
時間の経過がわかるようにスマホの電源を入れ、横からニーナが肩をつついてくるのに気がついて振り向くと、彼女は両手の平に小さな水たまりを生み出し差し出して来た。
「飲んでください」という事だろう。確かにめちゃくちゃ疲れたし喉が渇いてヤバい。
そんな気の利く良い子へのお返しに私はマグカップを二つ創り出し、それに水を入れ二人でゆっくりと飲み干した。
水を飲み終わり無言でニーナに礼を伝え、音を立てない様に背中から寝転んだ。
雲の流れる青空を見上げながら、ただ時が過ぎるのを待つ……私に出来る事は、それくらいだ。
――――――――――
場面は変わり、林道。
蜥蜴人の刺客と相対したシュタイナー・ミシェル一行の戦いが繰り広げられている。
巨体な蜥蜴人の岩の様な拳から繰り出される、一発一発が重たい連撃。
それをシュタイナーは静かな高速の剣閃で、一つ一つ丁寧に確実に打ち払って行く。
それは『流剣』と呼ばれる、相手の攻撃を受け流す事に特化した剣技だ。
見た目的な派手さは無いが、シュタイナーの高い技術力と感知魔法から繰り出される『流剣』はあらゆる攻撃を弾く鉄壁の剣術である。
対する蜥蜴人は、二メートル以上の体躯と発達した筋肉。更にその上には岩石の様な硬度の鱗を持つ。
その上、痩せ型の蜥蜴人程では無いが外見に似合わないスピードで動き回り、その身体から繰り出される打撃は砲弾の様な破壊力を持つ。
そして蜥蜴人特有の回復力で出血が止まるのも速い。
単純な白兵戦ならば隙の無い相手。
シュタイナーと共に立ち向かった手斧の兵士は顎と肋を数本砕かれてしまった為に戦線離脱させ休ませている。
――とはいえ、そんな彼の攻撃すらも全て『流剣』により防がれており、反撃を幾度も食らっている。
戦況的に見ても、総合力でもシュタイナーの方が確実に上だ。
しかし、なかなか押しきれず決定打を与えられない状況にあった。
彼の『流剣』を主体とした戦いは基本的に攻めより守りに特化しており、他の強者と比べると一撃の破壊力は低い。
故に、強固な鱗を持つその相手とは相性が悪かったのだ。
そして、全ての攻撃を防がれようと蜥蜴人の猛攻は際限なく続き留まる事を知らない。
一見、それは意味の無い攻撃を続けるバカの一つ覚えの様な光景だが――その真意をシュタイナーは理解していた。
「私の感知魔法をあちらの弟さんに使う暇を与えない為ですか? 兄弟想いな方だ」
「――――」
その言葉にも一切表情と動きに揺らぎを見せずひたすらに攻撃を続ける。
痩せ型の蜥蜴人も非常に厄介な相手。
一部の蜥蜴人が有する『迷彩』の対策には感知魔法が一番なのだが、それを使い向こうの戦場をサポートする暇も与えてくれない。
時間は掛かるがいずれシュタイナーが勝つだろう……が、このような戦いを続けていれば、強敵ジュナと交戦する前にかなりの体力を削られてしまう。
「どこかで突破口を見つけなければなりませんね」
――――――――――
「覚悟しな。僕は、ガキ相手だろうと一切手は抜かないよ」
そう呟きながら、俺の眼前に立つ痩せ型の蜥蜴人の姿が周囲の景色と一体化し見えなくなった。
「……っ!」
またこれだ。
まだ攻撃を何とか防御魔法で防げてはいるが……相手は足音も呼吸音も消せる。全く動きが読めない。
だが、横に立つシュタイナーの部下の一人は冷静さを失わず、声を上げながら魔法を放つ。
「何度も同じ手が通用すると思うな!」
彼は魔法を発動し、地表一面に氷を張った――今にも割れそうな脆く薄い氷。すぐにその意図を察した。
透明化したところで地に足のついた生き物。一歩でも歩けば薄氷が割れ、相手の位置が分かるという作戦だ。
流石はプロ、的確な判断だ。
何が起きてもいいように俺は防御魔法をいつでも発動できる準備をしておく。
――薄氷は、まだ割れない。相手もまだ動いていないのだろうか。まさか宙に浮いてるなんて事は無いと思うが……
「――! 気をつけろミシェルくん、魔力の高まりを感じる!」
「!!」
俺は意識を眼前に集中させ、兵士は氷柱を周囲にいくつか生成し、いつでも放てる準備を始めた。
そして――
凄まじい速度で薄氷に足跡が付きながらこちらに接近してくるのが分かった。
「はっ!?」
まさか魔力の高まりはただのブラフだったのか。
俺は魔力の障壁を二人の正面に展開し、兵士は足跡に向かって氷柱を放ち、薄氷と地面ごと敵を穿つ――
が、そこには、蜥蜴人の姿は無かった。
「――!?」
「騙されたねバーカっ」
蜥蜴人の声が聞こえ、直後、大量の土煙が巻き起こり一帯へ広がった。
「ぐっ、これは!?」
「土魔法の目眩ましの煙だ――そうか、土魔法で地面を薄氷ごと凹ませて、偽の足跡を作ったのか……!」
何だソレ、そんな事まで出来るのか、魔力の高まりはブラフじゃなかった。相手は自分の特性だけに胡座を掻いていない。想像以上のやり手だった。
再び障壁を展開し待ち受ける――次はどう来る、どこから……
「――!」
目の前からガンッと何かがぶつかった音がした。
すぐに広げた障壁を解き両手に集中させ纏わせて、前方の音がした場所へ拳を振るい――何かにぶつかった。
手応えがあった……
「あ?」
確かに手応えはあった。だが……違った。俺が殴っていたのは、ただの一枚の鱗だった。
「――っ!」
透明になった鱗だけを剥がし投げつけたのだと気が付き、それと同時。「左だ!」と兵士の声が聞こえ、反射的に回避行動へ移るが、左肩を深く切り裂かれていた。
「ぐぅっ!」
強い痛みが走り、その苦痛を堪えながら左を振り向くと、そこには蜥蜴人の姿があった。
「チィッ、首切って一撃で済ます予定だったのに!」
舌打ちする蜥蜴人へ兵士が氷塊を放ち、それを俊敏に回避し瞬く間に距離を詰め兵士へと爪を振りかぶる。
兵士はそれを回避しようと動き、俺は横から敵を殴りつけようと走り出して――振りかぶる蜥蜴人の左爪が降ろされる最中でピタリと止まり。
その左手の平に埋め込まれていた魔道具の存在に気が付いた時にはもう遅かった。
魔道具から炎の塊が放射され兵士の顔面を焼いて苦鳴が上がり、更に足へ右爪を深く食い込ませ切り裂かれていた。
「クソッ!」
あの傷を放置は不味い、急いで治癒魔法を――
「治癒を待ってやるお人好しじゃないんだよ!」
更にこちらへ向かって炎が放射されギリギリで防御魔法が間に合い何とか防いだ。
悔しいが相手の言う通りだ、治癒魔法を使う時間をわざわざくれるはずがない。
「次で終わらせるよ」
そう言い残し、また蜥蜴人はその姿を消した。
「はあ……はあ……っ」
痛い、重い傷を負った兵士が心配だ、俺だけで何とかしろってのか、勝機が見えない――
……いや、落ち着け、消えて居なくなったり転移した訳じゃない。
ただ姿が見えなくなっただけ……蜥蜴人の一部が持つ特徴の『迷彩』だ。父さんから聞いた事はある。
地に足が着いている限り、相手の動く痕跡はあるはずだ、きっと。とりあえず落ち着いて深呼吸しよう。
「ふう……っ」
冷静に、呼吸を整え、周囲の物音や動きのみに意識を集中させた。
ミーナを、ハジメを助ける為に家族の制止を振り切り、ワガママでここまで来た。
身体が痛い、治癒魔法で傷は回復できるが、疲労までは完全に回復してくれない。
時間を掛けたらジリ貧で俺が負ける。
意識を気配の感知のみに集中させる。
だが、音がしない……足音を消す技術があるのは知っているが、実際に遭遇すると想像以上に怖い手合いだ。
どこから来るのかが、全く分からない。
地面の草花や落ち葉、地表の僅かな変化も注視するが、何の変化も見られない。
――本当に相手は動いてるのか。
実はまた立ち止まったまんまなんじゃ……
「いや、気を抜くな」
分からないなら仕方ない。分からないなら、それなりの手を打つだけだ。
魔力消費は激しいが……防御魔法、魔力の障壁を全体に纏わせ、そのままの状態を持続させる。
また危機になればきっとシュタイナーが……とかは考えてはいけない。甘えてはいけない。
そもそも俺は、居なくなった家族を全員助けたいんだ……その為には、助けられるだけの力が要る。
ここでつまずくようじゃ、家族を守り、助けるなんて、無理に決まってる。
俺がやらなきゃ駄目だ。
「ふぅ……」
深呼吸し、再度意識を集中する。
やはり音は聞こえない。
草花、落ち葉が動く気配すらない。
全身に魔力の障壁を纏わせて、痛みを堪えながら周囲に五感を研ぎ澄ませ、かつて父から聞いた話を思い返す。
暗殺術の使い手は気配を殺し、意表をつき、死角をついて確実に敵を殺す。
次はどう来る。
死角を狙われてもいいように防御魔法で全身を守ってはいるが……いや。
この状態でも、死角がある。
俺の足元だ。
少しでも魔力消費を抑えるため普段から真下の足元にだけは張り巡らされていない。
『ミシェルの使う防御魔法は真下がガラ空きだから、土魔法には特に気をつけるのよ』
母、レイチェルの言葉の思い出す……土魔法だ。
だが相手に俺の弱点が見抜かれているとは限らない……いや、駄目だ。見抜かれている前提で考えよう。少しの油断も駄目だ。
俺の弱点を狙うなら、来るのは土魔法だ。
「……!」
徹底して警戒しなければ勝てない。
思い至り直ぐに足元から足の裏にまで障壁を広げ、その直後。
ボコッと真下の地面が盛り上がる感覚が襲いかかり、鋭い衝撃が全身を穿ち真上まで勢いよく突き飛ばされる。
「うぉぉっ!?」
さっきまで自分が立っていた場所、地面から生えた1メートル超の岩棘数本がそびえ立っていた。
防御魔法で防いだおかげで飛ばされるだけで済んだ、直撃したら死んでいた。
生きていたのは良かったが、それでもマズイ、中空で身動きが取れない。
地面に立つ痩せ型の蜥蜴人と目が合った。
蜥蜴人は中空のこちらへ手をかざし、
「燃えやがれ!」
魔道具から放射された炎魔法の波が全身に襲いかかる。
さっきの岩棘を防いだ影響で耐久性が落ちた障壁では防ぎきれなかった、炎が全身に纏わりつき焼ける痛みが襲いかかった。
「うぅぅあぁっ!!」
炎に焼かれる中、全身に治癒魔法を全開で掛け無理矢理身体の状態を維持しながら地面へと降下。
落下地点に出現した岩棘を新たに障壁を展開させながら防ぎ、その障壁を足場にして跳躍――蜥蜴人へ蹴撃を突きつける。
「チッ」
蜥蜴人は舌打ちしながら回避。
空振りしたが、このままの勢いを止めない。
魔法と『迷彩』を使用する暇を与えない。
両拳を振るい、また回避され、もう一撃を振るった直後。
胸部近くに爪を突き刺され、激痛に苦鳴を漏らした。
「ぅぐっ」
内臓にはギリギリ当たっていない、当たっていないはずだ、けど痛い、痛いし思考が止まりそうだった、叫びそうだったが、我慢した。歯を食いしばり、耐えた。
そして脳裏に過ぎるのはローランドの姿だった。
アイザックに横腹を突き刺され、そのまま相手を拘束し反撃した彼の姿。
俺にも、アレくらいの覚悟は必要だ。
爪を抜かれる前に蜥蜴人の腕を力強く抑えた。
「なっ、テメっ、離しやが――」
蜥蜴人の亜人が動く前にその顎下から、障壁を纏わせた一撃の拳を叩きつける。
「ぶぼっ!」
この敵に反撃の隙を与えたら駄目だ、更に鳩尾へ二撃目。
続けて三撃目の拳を顔面へと打ち込み、背中の大木まで飛ばし叩きつけた。
「がはぁっ!!」
蜥蜴人は息を荒くしながら膝を着き、歯を食いしばって、睨みつけて来た。
そして苦しげな呼吸で、怒りの声をあげる。
「クソ、クソ、クソ! 僕は、僕は、十五年以上も磨き上げて来たんだぞ! お前みたいな戦場慣れもしてない様な青いガキに、やられるなんて認めないからな!」
蜥蜴人は諦めない意思を込めた目で、声で、再び立ち上がった。
拳を何発か入れて何となく分かったが、たぶんアイツは蜥蜴人の中では身体が弱い方だ。もう息をするのも精一杯という感じだ。
骨も既にいくつか折れているかもしれない。
だが、それでも、まだ闘志が折れていない。
「次こそ殺してやるよ! やり方が卑怯とでも何でも言われようが知った事か、僕はどんな手段を使ってでもお前を……!」
「……いや、別に卑怯とかは思ってないけど……」
「あぁ!?」
「アンタはただ、自分の持ってる戦い方を行使してるだけだろ」
「……」
蜥蜴人はまた呆気に取られた様な表情をしていた。
強いし怖いし鬱陶しいし、絶対戦いたくない相手だとは思うが、卑怯な手段だとは別に思っていない。
「俺みたいな格下にも全力で……ただ仕事に真面目なだけだろアンタは」
「な……」
「まあ、正直邪魔されるのは迷惑だしどっか行って欲しいけどよ。別にアンタ個人に悪感情はねぇよ。むしろアイザックみたいな舐め腐ってる奴の方が腹立つっての」
たぶんアイザックなら格下の俺相手にいたぶって遊んだり、人の心を攻撃したり、透明化しながら俺を狙うと見せかけてシュタイナーを背後から殺しにかかったりするだろう。
だが、眼前の相手はそういう手段は取らない。
使う戦術が邪道に見えるだけで、持てる力で真っ向から全力で挑む姿勢そのものは正々堂々とも言える。
「……クソガキ……んな事ほざいたところで、僕は加減なんかしねぇぞ……!」
「分かってるよ」
蜥蜴人は歯を食いしばりながら一歩歩き出そうとし……苦鳴を漏らしながら、悔しげな表情で膝を着いた。




