4話 隠された思い
冒険中に倒れてしまったダビデは治癒魔法で回復したが数日安静にするように言われていた。
だが本人はもう良くなったからと外出したがったようだが、それは許されなかった。何故ならまだ顔色が良くなかったからだ。
ヤコブは心配だったので治癒魔法士の言いつけを守るように説得すると渋々納得してくれたようで大人しく従ってくれたのである。
ヤコブが時間をかけて作ってくれた特製スープを持って来てくれた。食欲はあったがまだ本調子ではないのでスープだけ頂くことにしたようだ。
匙ですくって口に運ぶとその温かさが体に染み渡り心が安らぐのを感じた。味も美味しくて思わず笑顔になってしまうほどだった。
「おいしい……」
ぽつりと呟くように言うと、それを聞いて安心したのか彼も嬉しそうな表情になった。
「そうか!良かった!」
それから他愛もない話をしながら食事を楽しんでいたのだが、途中で会話が途切れると沈黙が訪れた。
だが気まずい感じではなく、寧ろ心地良い時間だった。お互い黙っていても気を遣わずにいられる関係だからだ。
(やはりご先祖さまと一緒にいると楽しいな…。やっぱり……離れたくないな……)
また苦しい気持ちが湧き上がってきそうになるのを誤魔化すように、ダビデは口を尖らせて言った。
「早くクエストに行きたいな、もう体は良くなってるのに…寝てるだけなんてつまらないですよ!」
それに対してヤコブは少し困ったような表情をしながら答えた。
「そうだな……でも今は休む時だ。無理をすると治るものも治らないからな」
諭すような口調だった。その言葉を聞いた彼女は不満そうに頬を膨らませていたが、素直な様子でこう言った。
「わかりました。ちゃんと休んでます」
その様子を見た彼はクスッと笑うと頭を撫でてくれた。それが嬉しくてたまらないといった様子だったが、ふと何かを思いついたような表情になるとこんなことを言い出した。
「そうだ!何かして欲しいことはないか?私に出来ることなら何でもしてやるぞ?」
突然の申し出に戸惑ってしまった彼女だったが、なぜかヤコブの顔をじっと見つめてくる。
その瞳の奥には微かに思い詰めた切ない色が見え隠れしているような気がしてならなかったが、敢えて気づかないふりをして明るく振る舞うことにした。
「遠慮しなくていいんだぞ?」
そう言うと少し考える素振りを見せてダビデは答えた。
「また後でお願いしてもいいですか…?今は思いつかないから、お願いができた時に言いますね……!」
そう言って笑顔を見せる彼女だったが、どこかぎこちない感じがしたことに不安を覚えたものの気のせいだと思うことにしたのだった。
だが、後にそのことを後悔することになるなど夢にも思わずーー




