2話 倒れるダビデ ★
自分のダビデへの愛を自覚したヤコブ。
そして、性転換魔法が目前に迫ったもののヤコブと離れたくない思いから男に戻ることを迷ってしまうダビデ。
2人は互いに想い合っているのだが、その気持ちを伝えることはできないまま時間だけが過ぎていくのだったーー
そしていつもと変わらず冒険者の仕事をしながら、変わらぬ2人の生活が続いていたある日のことーー
(何だろう?何だか体が怠いような?それに寒気もするような…)
ダビデはその日、体調がいつもと違う自覚があったが、特に気にすることなくクエストの仕事をこなすことにしたのだった。
「ダビデ、いつもより顔色が悪くないかい?今日は休んだ方がいいんじゃないか」
心配するヤコブに対し、ダビデは首を横に振って答える。
「平気です!それより早く終わらせて帰りましょう!」
そう言っていつものように魔物を狩っていくダビデであったが、次第にその動きは鈍くなっていくのだった。そしてついにはその場に倒れ込んでしまったのだ。
それを見たヤコブは慌てて駆け寄るとダビデの体を抱き起こした。そして大声で呼びかけると彼女はうっすらと目を開け弱々しく答えた。
「ごめんなさい…本当は少し体が怠くて…」
「全くお前って奴は…すぐ治療してもらおう」
ヤコブはダビデに自分の背中に乗るように言う。
躊躇するダビデだが素直に言うことを聞くことにしたようだ。ヤコブにおんぶをされながら移動することになったのである。
互いに否応なく体が密着することになり意識してしまうが、緊急事態なので仕方がないことだと考えることにしたようだ。
(なんだか胸の鼓動が激しいな…ご先祖さまの背中、大きくて暖かいなぁ、良い匂いもして……父親みたいで安心する…)
広くて逞しい背中に身を任せていると安心感を覚えるダビデだった。だが同時に胸がドキドキしてくるのを感じたようだ。
それにまた濡れそうになってしまう。
(くっ…ご先祖さまが私をおぶって運んでくださっているというのに不謹慎だ!)
そんなことをぼんやりと考えているうちに、やがて目的地である街の治療所に到着したようだ。中に入ると治癒魔法師らしき男が駆け寄ってきたので事情を説明した後、治療を受けることになったのである。
この世界では病院の代わりに治癒魔法を受けられる施設がある。診察や薬の処方なども行ってくれ、大抵の病気や怪我は治癒魔法で早期回復することができる。
体の欠損や失明なども治癒魔法で元に戻せるというのだから驚きだ。ただし、死者を蘇生させることはできないとされている。
治療師の男は手際よく診断を終えると、2人にこう告げた。
「ストレスで体調を崩したようですね。相当の悩み事や心労が溜まっていたのでしょう。治癒魔法をかけておきますが数日は安静にしてください」
(え・・・・悩みや心労?体を壊すほどこの子は抱え込んでいるものがあったというのか…?)
一緒に仕事をして同じ家で暮らしているというのに、そのことに気づかなかったヤコブはショックを受けていたようだった。そんな彼をよそに治癒魔法の施術が終わる。
すると先程までぐったりしていたはずのダビデの表情が幾分か和らいでおり、呼吸も楽になったように見えた。
「これでもう大丈夫ですよ」
と言われ2人は安堵すると同時に申し訳なさそうな表情になるのだった。
「ありがとうございます!」
「お世話になりました!」
深々と頭を下げる2人に対して微笑みながら手を振ると、治癒魔法使いの男は去って行ったのだった。
その後、帰路の途中でヤコブはダビデに問いかけてみた。




