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1話 気持ちを伝えないの?

時は少し前に遡る。


ダビデがサイラスと夕食を食べに行っていた間、ヤコブはというと。



珍しく1人で出掛けてしまったダビデのことが気になっていたが、隣国の女諜報員マリカに誘われ会っていたのだった。



「あらお兄さん。相変わらず良い男ね♡気のせいかしら、前よりカッコよく見えるわ♡」


そう言ってしなだれかかってくるマリカに困惑しつつもなんとか対応するヤコブ。相変わらず男慣れした様子の彼女のペースに巻き込まれないよう注意しながら会話を続けることにしたようだ。



「済まない、ダビデは用事があって来れないそうだ」

「あら、ダビデちゃんにも久しぶりに会いたかったのに。でも貴方と2人きりでデートできるなんて嬉しいわぁ〜」



そう言いながら腕に絡みついてくるマリカ。悪い気はしないのが正直なところだがダビデのことが気になってつい彼女のことを考えてしまう。



「ダビデが夜に1人で出かけるなんて珍しいんだ。心配だ…」

「あら、子供じゃないんだから大丈夫よ!それにあの子は強い冒険者でしょ?」

「まあそうなんだが……やっぱり気になるな」


そう言うと考え込むような仕草をするヤコブだったがマリカは妖艶な笑みを浮かべこう言い放った。



「貴方…ダビデちゃんのこと好きなのね?」


突然の指摘に動揺する彼だったがすぐに取り繕うように言葉を返す。


「なっ……何を言うかと思えば……別にそういうわけじゃないぞ!」


慌てる彼にさらに追い討ちをかけるように言葉を投げかけるマリカ。



「顔に出てるわよ。前からあの子のことはお気に入りだったみたいだけど、やっと想いを自覚したってところかしら」


その通りすぎて何も言い返せないヤコブ。恋愛強者のマリカにはお見通しだったようだ。



(参ったな……こりゃ隠しきれないか)


観念したようにため息をつくと彼はこう言った。


「ああそうだよ、私はあいつのことが大好きだ。あいつのためならなんでもしてやりたいと思ってるよ……!」


その言葉を聞くと満足そうに微笑むマリカだったが、不意に真顔になるとこう問いかけた。



「ねえ、それって恋愛感情ってことよね?だったら自分の気持ちを伝えないの?」

「えっ・・・」


思いがけない質問に言葉に詰まるヤコブだったがすぐに答えを返す。



「伝えるつもりはない」


その返答を聞いて驚く様子を見せる彼女だったが、すぐに優しい微笑みを浮かべると諭すように言った。



「どうして?伝えてみないと分からないこともあるんじゃない?もしかしたら上手くいくかもしれないじゃない」

「いや、それでもだめだよ。あいつは私のことを信頼してくれているからな、こんな気持ちで告白しても困らせるだけだ」

「そうかしら?私の見立てだと……あの子も貴方のこと好きなんじゃないかしら?両思いだと思うけどなあ〜」



(ははっ…あの男勝りでガサツなあの子が、まさか私のことを好きなんてあるはずが……)



そう思いつつも少し期待してしまう自分がいることに気付いてしまうヤコブであった。

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