6話 想いに気付いたヤコブ ★
「え……興味…ですか?」
さすがにこの空気では、サイラスが自分を口説こうとしていることはダビデにも察することはできた。しかし何故急に態度が変わったのか理由が分からず困惑していると、彼は続けて言った。
「……僕も男ですから貴女みたいな魅力的な女性に惹かれるのは自然なことです」
そう言いながら距離を詰めてくる彼に対して後ずさろうとするが壁に阻まれてしまう。そしてとうとう壁際まで追いやられてしまった。逃げ場を失った彼女は観念して言うしかなかった。
「申し訳ありません。私は……信仰上の都合で恋愛はできないのです……」
そう告げるとサイラスは少し悲しそうな表情を見せた後に微笑んだ。そして優しい声音で語りかけてきた。
「そうですか……ではお友達になっていただけませんか?」
「友達…ですか?」
「ええ。魔法のことなど話せたら楽しいのではないかと思いましてね」
そう言われてしまうと断りづらいと思ってしまう彼女であった。
(確かに魔法について語り合える友人がいれば心強いかもしれないな……ご先祖さまの役にも立つかもしれない……)
しばらく悩んだ末に結論を出したダビデは小さく頷いたのだった。それを見たサイラスは嬉しそうに微笑むのだった。
***
ダビデを待っていたヤコブは、何だかヤキモキしてしまう気がするがふとこんなことを思うのだった。
(私はダビデのことをどんな存在だと思っているのだろう?あの子はこの世界で唯一と言える同胞であり、大事な子孫だ。それに私を敬い、慕ってくれるのだから可愛いに決まっているではないか)
そこまで考えたところで何か本心に蓋をしているような気がしてしまう。
(そうだ、あの子は可愛い子孫であり大事な仲間……それは違いないがあの子といると楽しくて一緒にいたいと思う。離したくないのが本音だ。本音……そう、私の本音とは……)
これまで本音を隠して誤魔化してきたのではないか。自分の本音とは何なのだろう。
(誰に言うでもない。私のありのままの本音を曝け出すんだ……)
そこまで思ってあることに気付き愕然としてしまう。
(私の掛け値ない本音……私は……あの子を抱きたい……本心では男女の関係を持ちたいと思っている。そうだ、本当はあの子のことが好きなんだ!だからこんなに執着しているのだ!)
やっと自分の気持ちに気づいた瞬間、胸が高鳴り顔が熱くなるのを感じた。今まで抑え続けてきた感情が込み上げてきて戸惑ってしまうほどだった。
そんな時、後ろから声をかけられた。振り向くとそこにはダビデが立っていた。




