5話 恋の魔法
(よし、行くぞ!!)
心の中で気合いを入れてから魔力を練ってイメージを固めていくと、それが具現化していくような感覚を覚えた。そしてその勢いのまま呪文を唱えた!
「……我が名はダビデ!汝、我に従いたまえ!《魅惑》!!」
次の瞬間、強烈な光が放たれ部屋中を覆い尽くした!光魔法に似ているが眩しいというよりもまるで霞のような柔らかい輝きだと感じた。
(これで良いのか?出来たんだろうか?)
ダビデは不安そうにサイラスを見つめるがーーー
「……これは素晴らしい!見事ですよ!まさかここまで完璧に魅了魔法を成功させるなんて……!」
驚きのあまり目を丸くしている彼に褒められたことで自信がついたようだ。嬉しくなって思わず笑顔になったダビデだったが、ここでふとあることに気づいた。
サイラスが自分を見つめる目がいつもと違うような気がするのだ……!その目は熱っぽくまるで恋をしているかのようだった。これが魅了の魔法の効果なのかとダビデは思ったのだがーー
「あの、先生。この魔法の効果はどのくらい続くのですか?」
気になったことを聞いてみることにした。すると彼は少し考えてから答える。
「そうですね……数分程度もあれば数時間以上持続することもあります」
ということは可能性として数十分間は効果が持続するということだ。それはつまりーー
(この講師は今ダビデの虜になっているということか?ううむ…講義とはいえ複雑な気持ちだ……)
そばで見学していたヤコブは複雑な心境になっていた。その感情が何なのかは自分でも分からなかったが、とにかく落ち着かない気分だった。
「あの、先生への魅了が解けるには待つしかないのですか?」
「ああ、大丈夫ですよ。僕は自力で解くことができますから。やはり気になりますよね」
サイラスは紳士的に対応している様子でヤコブも安心したのだが・・・思わぬ展開が待ち受けていたのだった。
***
「それではこれで魔法の伝授は終わりです。お二人とも素質が高いので短期間で習得することができましたね」
そう言って二人を褒め称えるサイラスにお礼を言い、帰ろうとしたところで呼び止められた。それもダビデだけが・・・。
「何か問題がありましたか?」
不安そうに尋ねるダビデだがそこには頬を染めて恥ずかしそうにしている彼がいた。どうしたのだろうと思っていると意を決したように口を開いた。
「もしよろしければ今度二人で食事でもいかがでしょうか……?」
突然の誘いに戸惑うダビデであったが、どうやら彼の様子を見る限り本気で誘っているようだ。だがどうして自分にそんなことを言ってくるのか分からないでいるとーー
「魅了の魔法は解けたというのに・・・僕は貴女に興味を持ってしまったようだ」
突然の告白に動揺してしまうダビデだったーーー




