4話 元王様は天然たらし!?
「ヤコブ殿は無事、変身魔法を習得できたので次はダビデさんですね」
ワクワクしながら待っていると、彼女は緊張した面持ちで頷いた。やはり自分が受けるとなると不安なのだろう。無理もないことだ。だが彼女ならきっと大丈夫だと信じているので励ましの言葉をかけることにした。
「大丈夫だよ、お前ならきっと成功するさ」
そう言うと少し表情が和らいだ気がした。そんな彼女を見ているとなんだか微笑ましい気持ちになるのだった。
「ダビデさんは光属性のようですがカリスマ性が高いようですね。そして…天性の惹きつける魅力をお持ちのようですね〜ふふふっ♪」
楽しそうに笑うサイラスに若干引き気味になる二人であった。だが確かに彼女の持つ雰囲気や人柄に惹かれるものを感じるのは確かだろうと思いヤコブは納得したように頷く。
「そんな貴方に今回授ける特殊魔法は『魅了の魔法』です。魅了して敵を惑わしたり判断力を低下させる効果があります。ときには相手を戦闘不能状態にさせたり一時的に味方として使役することも可能でしょう!」
魅了の魔法を本当は男であるはずの自分が使うのかと思うと引いてしまうダビデだが、すぐに冷静になって尋ねる。
「魔物と戦うことが多いと思うのですが魔物にも使えるのでしょうか?」
それを聞いたサイラスは少し考え込む仕草を見せると小さく頷いて答えた。
「魔物にも使うことはできますよ。魔物は理性を失った者も多いですからね。そして魔物との戦闘だけでなく隠密行動にも役立つことでしょう」
それを聞いて安心した様子のダビデだった。
(隠密行動…もしやマリカはこの『魅了の魔法』とやらの使い手だったりするのか?確かに元から良い女だが、男が抗えないほどの魅力を持っているような気もするな)
隣国の女諜報員マリカのことが頭によぎるヤコブ。彼女に誘惑されたことや口淫された時のことまで思い出してしまい、変な気持ちになる前に慌てて頭を振るのだった。
そんな彼を他所にダビデは真剣な表情で魅了の魔法を実践することにした。
だがそんな彼女を見つめるサイラスの目はどこか妖しい光を宿していたことに誰も気づかなかった。
「では私に魅了の魔法を使ってみてください」
「え……?でもいいのでしょうか?」
いくら練習とはいえ自分を惚れさせるというのはさすがに抵抗があるのだろう。躊躇う様子を見せる彼女だったが、サイラスは構わないと言うので決意を固めたのか意を決して唱え始めた!




