3話 変身魔法を習得しました! ★
まずはヤコブが今回伝授される「変身魔法」についての説明を受けることになった。
「変身魔法にはいくつか種類があります。一つ目は動物に化ける『獣化』、二つ目は無機物に化ける『擬物化』、三つ目は自分自身を他の生物に変える『擬態変化』、四つ目は強力な魔物に姿を変える『魔物変化』となります」
今回はその中で四つ目の魔物変化を習得することになったようだ。
大量の魔力を消費するため、使えるとしても1日1回まで。そして数分程度しか持続できないのでタイミングよく使わなければならないだろう。
「あの…服はどうなるのでしょう?裸になってしまわないでしょうか?」
心配そうに尋ねるヤコブ。どうやら変身後は服を着ていない状態になるのではないかと心配しているようだ。
「ああ、その点は大丈夫ですよ。変身なので着ている状態で反映されますから安心してください」
それを聞いて安心した様子の彼だった。
いくら男とはいえ裸になるのは抵抗があるしダビデに見せるわけにもいかないからだ。
「さて、では早速始めましょうか!」
そう言ってサイラスは変身魔法を伝授するため術式を唱え始めると、彼を取り巻く空気が一気に変わるのがわかるほどだった。
変身魔法を伝授されたヤコブは実際に変身をして実践することになった。
サイラスが手を叩くとどこからともなく3体のマネキンが現れる。しかもただのマネキンではなく全身鎧を纏った兵士のような格好をしている。
「これは何ですか……?」
不思議そうに尋ねると彼は答えた。
「今からこのマネキン達に攻撃をしてもらいます。その際にどの程度ダメージが与えられるか計測しますから頑張って耐えてくださいね〜」
軽い口調でとんでもないことを言う彼に驚きつつもさっそく実践することにした。
(うん?何だ…体が熱いぞ…これは魔力?なのか……?)
身体中から力がみなぎってくるような感覚を覚えると同時に不思議な感覚に襲われたのだ。まるで自分の体ではないような違和感である。
「わあ!?」
ダビデが驚きの声をあげる。それもそうだろう。ヤコブの体があっという間に鳥型の魔物に変身してしまったのだからーーー! その姿は鷹のように鋭い目を持ち翼を広げると2メートル近くある大きさで迫力があった。
「凄い……!これが私の姿なのですか……?」
信じられないといった様子で呟くとサイラスが説明をしてくれた。
「そうですよ。今のあなたは鳥の魔物になっています。ちなみにその体は頑丈ですから思いっきり攻撃しても大丈夫です」
「なるほど……」
「さあ、やってみてください」
促されると彼は頷くと勢いよく飛び立ち攻撃を仕掛けた。
バサバサという羽音と共に目にも止まらぬ早さでマネキンに羽を突き刺すと、そのまま首をへし折った!さらにもう一体にも蹴りを入れると粉々に粉砕してしまう! その後も鉤爪で引っ掻いたり嘴で突いたりして次々と破壊していく!凄まじい威力だ!
(すごいな……これならすぐに覚えられそうだ!)
そう思った瞬間、体に異変が起こった。急に力が抜けていき、意識が朦朧としてくるのを感じたのだ!そしてそれと同時に体の変化が始まるのを感じた。それは全身に起こるもので、特に下半身を中心に起こっていた。
(くっ……!!一体何が起こっているんだ!?)
焦る気持ちとは裏腹にどんどん変わっていく自分の体・・・いや、正確には元に戻っていくと言った方が正しいのかもしれない。やがて完全に人間の姿に戻るとその場に倒れ込んでしまったのだった・・・。
「ヤコブさま!大丈夫ですか!?」
ダビデは慌てて駆け寄るが、ヤコブは手を上げて心配ないとアピールする。そして立ち上がると何事もなかったかのように言った。
「ああ、問題ないよ。ちょっと疲れてしまっただけだ」
その言葉にホッとした様子を見せるダビデだったが、サイラスは拍手をしてヤコブに声をかける。
「なかなかの威力ですね!貴方は元々強い御方と見受けられる。おそらく貴方はバーサーカータイプでもあるのでしょう。それに戦闘センスも抜群のようだ。素晴らしいですよ」
「そ、そうですか……?ありがとうございます・・・」
褒められて悪い気はしないので素直に礼を言うことにする。そしてふと疑問に思ったことがあったので質問してみることにした。
「あの……なぜ私はあんなふうになってしまったのでしょうか?」
するとサイラスは説明を始めた。
「あれは魔力を使いすぎたことによる反動のようなものです。変身魔法は非常に強力ですが、その分消費魔力も多くなるのです。そのため使用する際には細心の注意が必要になります」
今後魔力が上がっていけばもっと持続させたりコントロールも可能のようだ。ひとまずヤコブは特殊魔法を習得できたとのことで次はいよいよダビデの番となった。
果たしてどんな特殊魔法を習得できるのだろうか?楽しみであるーー




