9話 私は性愛反応を示している…?
成り行きで温泉街に立ち寄ることになり、そして成り行きとはいえ初の旅行をした2人だが、エッチなハプニングもありつつ、距離がぐっと近づいてしまうことになってしまったのだった。
ダビデは元は男で、今も自分を男だと思ってはいるがこの世界ではなぜか女性として転生してしまったため、肉体的には女なのだという自覚はある。だが、心は男のままだと思っていたのだが、変化しつつある自分自身の心の変化についていけず戸惑っている状態だった。
必死に誤魔化し、見ないフリをしているがーーヤコブへの気持ちは単なる尊敬や仲間意識ではなく、彼を意識しているのだということを薄々感じ始めていたのである。
考えないようにしていたが、今回の雪山でのクエスト、そして温泉街の一泊旅行での出来事は、嫌でも「ある事実」を認めざるを得なくなってしまっていたのだーー
(私はーーーご先祖さまに、性愛反応を示しているんだ……)
その事実を突きつけられた瞬間、頭の中が真っ白になったような気がしたがすぐに我に返ることが出来た。
(私は体だけではなく心まで女になってきているのかーー?それともこれは一時的なものなのか……?わからない……どうしたらいいんだろう……)
やはり元は男であり生前の記憶も残っているので自分は男だという認識が強く、受け入れ難い状況ではあるが、それでも体は正直に反応してしまうものでーー
(うっ……!だめだ!考えるな!忘れろ!忘れるんだ!)
頭を振って雑念を振り払い気持ちを切り替えようとするも上手くいかないようで悶々としていると、不意に後ろから声をかけられた。
「どうした?」
振り向くとそこには心配そうな顔をしたヤコブが立っていた。どうやら様子がおかしいことに気づいて声をかけてきたらしい。
優しい眼差しを向けてくる彼に胸が高鳴るのを感じたが、悟られないよう平静を装って返事をすることにする。
「いえ。荷物の整理をしてきます」
今日は帰宅するのでもうすぐ出発しなくてはならない。温泉で疲れを癒したので2人とも体力を回復できたようだ。行きのように交代でマジックカーを運転して帰ることにした。
クエスト用に採取した貴重な薬草や植物等は保管用の箱に入れて厳重に梱包してある。
他の荷物もまとめてマジックカーに積み込んでから運転席に乗り込むと、助手席にはダビデが乗り込んできた。
シートベルトを締めたのを確認して魔石を発動させると、車体が振動し始めると同時に低い唸り声を上げる。その音を聞きながらハンドルを握るとアクセルを踏んで車を発進させたのだった。
「今回の仕事は大変だったな。だがお前に助けられたよ」
「いえ…いつも助けていただいてるのは私の方です」
「やはりお前は私にとって必要な存在だ……」
急にそんなことを言われて思わずドキッとするダビデだが、従者としての意味だと慌てて自分に言い聞かせて平常心を装うことに全力を注ぐ。
(も、もう…この人はたまに思わせぶりなことを言ってくるんだから。心臓に悪いぞ……!!)
顔を赤くしながら心の中で叫んでしまうのだった。




