6話 雪山の危機 ★
朝から出発し午後過ぎには目的地の山付近に到着した2人。
登山は遅い時間から始めては危険なので今日は野営をして、明日の早朝から登山を開始することにした。
「今回の任務だが順調に行けば山に1泊して帰って来られるな」
夕食を食べながら今後の予定を確認する2人。
山は地上とはいくつも異なる点がある。そして遭難や落下など命に関わる危険なこともあるため慎重に行動しなければならないだろう。今回登山する山は雪が積もっていて体温調節が難しい場所だ。さらに夜は急激に冷えるため油断禁物だ。
2人は相談し合い念に念を入れて準備をしたのだがーー登山上級者でもないので詰めが甘かったのである。
***
翌日。
夜明け過ぎの早朝から登山を始め、夕方前にはここにしか生息してない貴重な薬草や、他にも珍しい植物を大量に入手することができた。
「やった!これだけあれば十分ですね!」
喜ぶダビデだったが、ふとあることに気づいた。
「……あれ?なんか霧が出てきたな」
さっきまで晴れていたのに急に濃い霧が発生し視界が悪くなってきたのだ。しかも標高が高くなっているせいか空気が薄い気がする。
「まずいなこれは……早く下山しないと」
急いで下りようとしたがーー
(まずいぞ…!視界が悪い。しかも急に吹雪いてきたじゃないか……!!)
山の天候は変わりやすいということを思い出す。まさに自然の脅威を思い知るヤコブ達であった。
雪山において特に危険なのは「ホワイトアウト」という現象だ。その名の通り真っ白な世界となり方向感覚が狂い、自分が今どこにいるのかすらわからなくなってしまう状態を指す言葉である。
それだけでなく猛吹雪による低温・強風により低体温症を引き起こし、意識を失ったりそのまま死亡するケースも少なくない。幸いにも今はそこまで酷くはないが、このまま山頂付近に留まっていたら危険だと判断したヤコブ達は急いで引き返すことに決めたのだった。
***
何とかテント地点まで引き返すことができたがすでに日が暮れて辺りは暗くなっていた。
「戻ってこれて良かったですね、ご先祖さま。今日はここで泊まり、明日ーーー」
ダビデは振り向きながらヤコブに笑顔で話しかけるが、彼の様子を見て一気に顔が青ざめてしまった。
なぜならそこにはーーー今にも死にそうな顔色で倒れ伏す姿があったからだ!!




