5話 遠方への出張任務
「よし、必要な物は乗り物に乗せられたな」
異世界で運転免許証を取得できた2人だが、異世界の乗り物である最新型移動用魔道具…通称「マジックカー」と呼ばれる車に似た乗り物をレンタルしていた。かなり高価なので富裕層や貴族などごく一部の者しか所有しておらず、その他の者はレンタルするしかないという話を聞いたからである。
保険もついており、万が一何かあった時も安心だ。
見た目はまるで車のようだが車輪はなく浮遊している状態で進むことができるのだという。原理は不明だが、風属性の魔石によって浮いているらしいのだそうだ。
だが、舗装が進んでない異世界でも車が通れる幅さえあればどこでも走れる上に、荒れた道や雪道でも安全に走行できるのだから便利なものである。
タイヤで道を踏み荒らす心配もなく揺れもないので快適だし、何より速くて便利だ。
今回マジックカーをレンタルしたのは、遠方のクエストのためだった。
場所は僻地の山であり、ここでしか採取できない貴重な薬草を入手する依頼だった。高額報酬の依頼ではあるが場所が遠いためになかなか引き受け手がいなかったのだそうだ。
その山は雪山であり、野営を余儀なくされることが予想される場所でもあった。また気温も低く過酷な環境であるため準備を怠らないように注意が必要だと言われたのだ。
出発前に防寒具などは揃えたが念のため食料なども多めに用意することにした。
「マジックカーに荷物を乗せることはできますが、登山では持って行ける荷物は限られますからね。それに寒さ対策も必要ですし……」
マジックカーで山の中を通ることはできそうにないので、登山を余儀なくさせられることになるだろう。そのため体力温存も兼ねて荷物を極力減らさねばならないということだ。
(雪が積もっている山で野営するとなると、体温が下がって凍死の危険もあるかもしれない……油断禁物だな)
そう警戒するヤコブ。そしてその予感は的中することになるのだった……。




