1話 ささやかな幸せ
隣国からの魔物討伐の依頼。そして王子からの求婚問題を何とか解決できたヤコブとダビデは、隣国から自宅へと帰ってきていた。
短い間に色々なことがあったので久しぶりに感じてしまう。
だがその分得るものもあったのだった。
2人が隣国を出発する前のことだった。
「ヤコブさま、ダビデさん。今回はありがとう。おかげでシャファクさまから、観劇のお誘いがあったわ」
シャファク王子の許嫁アリエッタ令嬢は顔を赤らめながら2人に礼を言った。
「いえ。アリエッタさまが素敵な女性だからですよ」
「ありがとう。ダビデさん…嫌な態度をしてごめんなさいね。シャファクさまを取られたくなくて嫉妬してしまって…」
「いえ、気にしておりませんよ。応援しております」
「貴女がくれたアドバイス…為になるわ」
ダビデはあることを彼女に提案していた。
それは政治の勉強をすることだ。
シャファクは時期国王第一候補であり、現国王の元で政治の補佐もしている。
ダビデが彼と会話した時、ダビデも元の世界で王をしていた経験から政治の話で盛り上がることがあった。
シャファクが自分を気に入ったのはそれも理由の一つではないかと思ったのだった。
「あなた達ってただの冒険者かと思ってたけど有能なのね。私も微力ながらあなた達を支援させていただくわね!」
そう言ってアリエッタ令嬢は去っていった。彼女の気持ちにも変化が生まれたようで何よりだった。
そんなことを思い出しながら夕食を調理するヤコブ。
ダビデも皿を用意したりテーブルを整えたりと手伝ってくれている。
料理が完成し始めてきた頃、待ちきれないように見つめてくる彼女に思わず声をかけてしまう。
「一口だけだぞ」
「え、いいんですか!?」
ぱあっと顔を輝かせて喜ぶ彼女を見て苦笑すると、火傷しないよう冷ましてフォークに刺した料理を彼女の口元に運ぶ。
それをパクリと食べると幸せそうに微笑んだ。
(ずっとこんな日々が続けばいいな…)
彼女の笑顔を見るとそんな気持ちが湧き上がってくる。
だが、幸せな日々はある日突然終わりを迎えることをこの時は何も知らなった。
しかしそれはずっと後の話であるーーー




