9話 王子の恋心の行く末
翌日、アリエッタ令嬢の元を訪れた3人。
アリエッタのシャファク王子への真剣な想いは、王子には伝わってない可能性が高いとマリカとヤコブは考えていた。
アリエッタは本当は純粋で健気な女性だが、令嬢ゆえのプライドが邪魔して素直に好意を出せずにいるのだろうと推測したのだ。
(だからこそ、シャファクさまの気持ちを揺さぶる必要がある)
男は高慢で高飛車な女は可愛いと思えないものだ。
シャファクがダビデに惹かれたのも、美しく魅力的なだけでなくダビデが素直でプライドが高くない性質だからだろうとヤコブは分析していた。
やはり女より優位に立ちたいのが男の本音である。
そこで考えた作戦とはこうだーーー
アリエッタの想いを手紙にしてシャファク王子に届けるというものだった。
贈り物は何度も送っていても、それだけでは気持ちは伝わらなかっただろう。
だからこそ気持ちを文字にして伝えようという算段である。
返事を要求する内容ではなく、ただ素直な気持ちを伝えるーー
普段は気取って素直ではないアリエッタだからこそ、彼女の意外な一面を知ることができて効果的ではないかと思えた作戦である。
(手紙だけでシャファク王子が彼女に振り向くかはわからない。だが情を抱かせることは出来るはずだ)
「手紙…そういえば、シャファクさまに自分の気持ちを伝えたことなんてなかったわ。贈り物だけでは伝わらないのね」
3人は顔を見合わせた後頷き合う。
「でも何て書けばいいの…手紙なんかでシャファクさまを振り向かせられるのかしら…」
「アリエッタさま。愛の告白をして返事を求めるのではなく、本当はもっと……………と。そう伝えてはどうですか。この手紙だけで振り向かせないといけないと気負わなくていいのです。ですがシャファク王子の心に何かしら響くはずですよ」
ヤコブは優しく「あること」を彼女にアドバイスをする。
そう、あくまできっかけになればいいのだ。
普段はプライドが高そうなアリエッタだからこそ、そのギャップは男にとって魅力的に映るだろう。
「そうね……わかったわ。やってみるわ」
そうしてアリエッタはシャファク宛に手紙をしたためることにしたのだった。
そして次の日、アリエッタからの手紙を受け取ったシャファクはその内容を見て驚きに目を瞠ったのだった。




