7話 罪悪感に苛まれるダビデ
シャファク王子の策略によりすれ違いになってしまったが、誤解が解け仲直りすることができた2人。
ダビデは元の明るさを取り戻していた。
使用人達が使っているキッチンを借り、遅い夕食を拵えてやるとダビデはいつものように嬉しそうだ。
その姿を見ていると自然と笑みが溢れてくるのがわかる。
やはりこの子は笑っている方が似合うと思った。
「美味しいです!さすがご先祖さまだ!」
パクリと一口食べるなり満面の笑みを浮かべる姿はまるで小動物のようで可愛らしいと思ってしまう。
「ところでダビデ。我々がこの国に召集されたのは魔物の大群の討伐を手伝う為でもあったが、シャファク王子がお前に求婚する目的だろう。それを解決しないと帰ることは難しいだろうな」
「……そうですか」
途端に表情が曇るダビデ。
「私はお前を彼にやるつもりなどない。たとえこの国との縁故を無くしてもな。お前の方が大事だ」
「ご先祖さま……」
真っ直ぐな言葉に胸が熱くなるのを感じた。
性転換魔法の存在を知り、いずれ男に戻れるかもしれない。
そうなればヤコブとは離れることになるかもしれないーーー
だが今は彼のそばにいたい。その気持ちに嘘はつけない。
せめて彼と過ごす1日1日を大事にしようーーそう心に決めたのだった。
「だができる限り手は打とうと思う。お前にも共有しておくが、王子の許嫁を味方につけるつもりだ」
ヤコブはシャファクの許嫁であるアリエッタの件を話す。
「そうだったんですか…だから私はその方に嫌われていたのですね。私のせいで婚約破棄になるかもしれないなんて」
「お前のせいではない。気にするな。私達は穏便に求婚を断りたい。アリエッタ嬢は王子と結婚したい。互い
の思惑が合致している以上利用しない手はない」
普段は優しく穏やかな性質のヤコブだが意外と策士なところがあるようだ。
彼のそんなところは嫌いではなく、ダビデも生前は王をしていたのもあり綺麗事だけで政治はできないことを知っている。
やはり自分と気が合うのかもしれないと思ったのだった。
***
ダビデは就寝しようとベッドに横になったもののなかなか寝付けずにいた。
(眠れない……)
目を閉じると先程のキスのことが思い出されるのだ。
そしてあの時の感触を思い出してしまい身体が熱くなってくるのを感じる。
(だめだ……!思い出すなって……!)
そう思っていても脳裏に浮かぶ光景はなかなか消えてくれない。それどころか鮮明に蘇ってきてしまう始末だ。
ダビデは思わず自分の唇を指でなぞってしまう。
(口付けは我々の慣習だ……あれは敬愛の意味だ)
そう自分で納得させ、今度はシャファク王子が自分を騙そうとしたことを考える。
(私とご先祖さまの仲を疑い、引き裂こうとしたのか……)
そこでふと生前の自分の過ちが連想される。
姦淫の罪を隠蔽するために、罪のない部下を策略で死に追いやった過ちをーーー
そこで思わず最悪な想像が浮かんでしまう。
(もし、ご先祖さまが同じ目に遭ったらーーー策略で死に追いやられてしまったら…?)
嫌だーーー
そんなの耐えられないとダビデは思った。
(さすがに私を手に入れるためにそこまですることはないだろうが…だが私が生前に犯した罪は何て重いのだろう……)
この世界でなぜか女になり、それは罰だろうと思っていた。
しかしそれだけでなく贖罪が必要だとしたら、自分はヤコブを最悪の形で失ってしまうのだろうか・・・
そう思うと恐ろしくて気が狂いそうになる。
いやそんなことはさせないーーー絶対に守ってみせるーーー!そう思い直し決意を固めるのだった。
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