3話 寵愛を受ける正ヒロイン ★
時期国王であるというのに、ダビデ1人だけと結婚しても良いーー
シャファク王子は完全にダビデに惚れ込んでいるようだった。
そしてそれは決して嘘ではないようで真剣な眼差しを向けてくるものだから戸惑ってしまう。
「そんな…貴方さまは次期国王であらせられるお方ではありませんか!私ごときのために人生を棒に振るおつもりですか!?」
必死に説得しようとするものの、シャファク王子は怯むどころか更に距離を詰めてくる始末であった。
「貴女と結婚できるなら次期国王の地位を捨てても良い。だが御心配不要。必ず説得してみせるよ」
一体どうすればいいのか…
どんどん悪い方向へ転がっていく状況に頭を抱えたくなった時だった。
「……ねえダビデさん。もしかしてヤコブ殿が気になるの?」
突然そんなことを言われて心臓が跳ね上がるような感覚を覚えた。
心なしか顔が熱くなってくる。
(ご先祖さまは大切な御方。だが私は本当は男だ。そんな目でご先祖さまを見るなど有り得ぬ・・・)
心の中で否定するダビデだがシャファクは続ける。
「こんなこと言いたくないけど…ヤコブ殿には良い仲の女性がいるんだよ。貴女も知っているマリカという女性だよ……」
「!!」
さらにシャファクはこの世界の魔道具であるスマホに似た端末を取り出し、ある写真をダビデに見せつける。
そこには腕を組んでラブホテルに入っていく男女の姿があった。
よく見覚えがある顔だったーーーヤコブ本人だったのだ。
「ここはね、平民が利用するいかがわしい休憩所なんだ。大人のカップルがそういうことをするために使う場所なんだよ」
ショックのあまり声が出ないダビデに対して追い討ちをかけるかのように、他にも証拠写真を見せつけられる。
「ごめんね。ショックだった?でも現実を直視しないとダメだよ。彼はマリカと愛し合っているんだよ」
先程偶然見かけたヤコブとマリカの姿を思い出す。
笑いながら話していたし、大人の恋人同士のようでお似合いだった。
急に彼が遠くへ行ったように感じ、胸が苦しくなると同時に喪失感に襲われる。
そんな様子を見たシャファクは笑みを浮かべた後こう言ったのだ。
「じゃあ僕はこれで失礼するよ。これから公務があるんだ、また今度会おうねーー我が未来の花嫁よ♡」
去り際に投げキッスをして去っていった彼の背中を見つめながら呆然と立ち尽くすことしかできなかったーーー
(なぜ私はショックを受けているんだ?ご先祖さまにとって幸せなら喜ばしいことなのに…なぜこんなにも悲しい気持ちになるんだろう……?)
考えても答えは出なかった。ただ胸の痛みだけが増していくばかりである。
(ご先祖さまは結婚するのだろうか?そうなれば私はもうお側にいるわけにいかない…)
ヤコブと離れることを思うと勝手に涙が零れてきたのだった……




