2話 狙われる童貞 ★
怪我をしたヤコブは包帯が取れるまで入浴できなかった。
代わりに体を拭いていたが、髪は洗えない。するとダビデが湯が入った桶を部屋に持ってきた。
「髪を洗って差し上げます」
少し気恥ずかしいが、素直に好意を受け取ることにした。
少々ガサツで頭皮をガシガシ洗っているがそれが気持ち良すぎて癖になりそうだ。
洗い流した後はタオルで優しく拭き取った後、温風の魔道具で乾かしてくれたのだがそれも心地よい刺激となり眠気を誘うほどであった。
「ありがとう。さっぱりしたよ」
礼を言いつつベッドに横たわる。傷はまだ痛むもののだいぶ良くなっているようだ。これなら明日には動けるようになるだろう。
「ところで王子の方はどうだ?お前にしつこく付きまとったりしてないか?」
気になっていたことをぶつけてみる。
ダビデがシャファク王子に求婚された問題はまだ解決できてないからだ。
「はい。今回の魔物の襲来の件で王子も忙しそうですし今は落ち着いています」
それを聞いて安心したが、油断はできないと思った。
(その前にマリカにも警戒しなければなるまい……!何か企んでいるのか…?)
そう思いながら眠りにつくことにしたのだった。
***
全治したヤコブは、マリカとの約束通りデートすることとなった。
今日の彼女はいつもと違い、清楚なワンピースを着ておりまるで別人のようだった。普段の色気ムンムンの姿とは大違いである。
だがいかにも男が好きそうな雰囲気で、やはり男漁りが好きな様子がうかがえるのであった。
「済まないが、私は辺境の地に住んでいた故、女性を喜ばせる術を知らないのだ……」
情けないと思いつつも正直に打ち明けることにした。この世界の女性をエスコートするのは難しそうだ。
さすがに異界から来たとは言えなかった。
しかしマリカは怒ることもなくむしろ楽しんでいるように見えた。
「あら、初めてのデートなの?もしかして貴方…童貞さんかしらぁ~ん♡♡♡」
(うっ!)
冷や汗をかきながら動揺を隠しきれずにいるヤコブを見て、さらに追い討ちをかける。
「だけど…貴方って不思議よね。女の扱いをわかってそうというか童貞臭さがないのよね、まるで妻子持ちみたいな包容力があるし」
確かに生前は妻子がいてその記憶があるのだから童貞と言っても女性経験の記憶はあるのだ。
だが異世界に来てから女性と付き合ったことはないので童貞なのは間違いなかった。
それを見透かされているようで恥ずかしかったのだ。
そんな様子を見たマリカはくすくす笑いながら言う。
「まあ、いいわ♡今日は私がリードしてあげるから安心してちょうだいね!」
そう言って腕を絡めてくる彼女に対して複雑な心境になる。
(本当に童貞みたいね…童貞食いも悪くなさそう……♪)
狙われるヤコブの童貞ーー?この後どうなるのか!?




