7話 死の覚悟と溢れる思い ★
多くの仲間達を負傷させた恐るべき強敵ワイバーンを倒したものの、囮役になったヤコブは背中から爪で引き裂かれ、血だらけになって倒れていた。
兵士達が騒いでいるのをヤコブは薄れゆく意識の中で聞いていた。
なぜか不思議と痛みは感じていなかった。だがそれが逆に死を感じさせるーー
(体が動かぬ…私は……ここで死ぬのか?)
ヤコブの頭に浮かぶのはダビデの顔だった。
(あの子は…この世界に家族もなく私以外に同胞もいない。あの子を1人残して逝ってしまうなんて無念だ……)
そんなことを考えているうちに意識は遠のきそうになる。
ダビデの笑った顔や走り回る姿、おいしそうに食べる顔、泣いている顔・・・
揺れている大きな胸や戦闘中に見えた形の良い尻、そして水浴びしていた時の美しい裸体……
こんな時に何を思い出しているのだと思いながら意識が途切れそうになったその時だった。
(嫌だ……死にたくない。あの子を1人残して死ぬなど耐えられない!!!)
心の底から死にたくない気持ちが溢れ出す。
だが瞼が重くなっていく。
生前の愛妻ラケルの姿が見えた気がした。幻だろうか?それともーー迎えに来たのか?
ラケルの姿がダビデの姿に重なるような気がしたーー
「ご先祖さま!!私が貴方をお守りするーー!」
遠くでそんな声が聞こえたような聞こえなかったような気がする・・・
***
「・・・ん・・・?」
ヤコブは何か柔らかい感触を頭に感じた。
布ではなくもっと弾力があり温かくて柔らかい気がするのだが一体これは何なのか……?
さらに良い匂いまでする。
甘い花のような香りに包まれていた。どこかで嗅いだことのある懐かしい匂いがした。
「うっ・・・」
目を開けるとそこには・・・
豊かな下乳の谷間が目に飛び込んだではないか!
真下から胸を見ている形である。
「ぶわっ!?!?!?」
驚きのあまり目をカッと見開き叫んでしまった。
「ご先祖さま!お目覚めですか!」
頭上から聞き覚えのある声がすると思ったらそこにいたのはダビデであったのだ!
どうやら膝枕をしてもらっていたようだ。
ということはつまりこの柔らかな感触は彼女の太腿だったのかと思い至り急に恥ずかしくなってきた。
顔が熱くなるのを感じたほどだ。
「私は死んだのでは…?」
「治療を行ったのでもう大丈夫です!良かったです!本当に心配しました……」
涙を浮かべながら言う彼女に愛おしさが込み上げてくるのだった。




