2話 離れ離れになる2人
ダビデが求婚をされたーー
それも一国の王子に。
ヤコブの頭の中はぐるぐると回っていた。
王子の妻であれば王族や貴族など身分が高い者なのではないか?
ヤコブもダビデも異界から来た人間だ。この世界に血統もなくどこの馬の骨とも知れぬ平民である。
「しかしあの子は貴族でもない平民です。王子の妻にはふさわしくないのでは」
「それが王子は大層あの少女を気に入っておられるようで。王族であれば複数婚も可能ですし、第一夫人は貴族の女性でしょうが王子は恋愛結婚もしたいのでしょうな」
(何だと…!ダビデを妻の1人にするつもりか……!)
ヤコブの時代も一夫多妻は珍しくなく、生前の自分も望まなかったとはいえ一夫多妻状態だった。
この異世界では一夫一妻が基本のようだが王族や貴族に限っては複数の伴侶を持つことが一般的のようだった。
とはいえダビデがそんな立場になることを想像するだけでゾッとしてしまう。
「ヤコブ殿。今は一刻を迫る状況です。この王都にまで魔物が侵入しては被害が出る恐れがあります。さあ、急ぎましょう」
(ぐぬう……!)
急かされるように兵士たちとともに戦地へと向かうこととなったのである。
今は戦いに集中しなくてはならない。ダビデのことが気がかりだが、まずは目の前の脅威を取り除こうと考えたのだった。
(ダビデ・・・・)
***
一方ダビデは城の一室で待機させられていた。
(ご先祖さま…私も助太刀したいがまさかこんなことになろうとは)
シャファク王子からまさかの求婚を受けたダビデだが、王子の婚約者になるかもしれないのであれば戦場に行かせられないと、安全な場所で過ごすことを余儀なくさせられたのである。
(私は結婚など望んでおらぬ。だが…せっかくこの国と縁故ができ国認定の冒険者になれたというのに、王子の機嫌を損ねることは避けたいところだ)
元の世界で王をしていたダビデなので、外交の難しさは知っていた。だからここは大人しく従うしかなかったのだ。
ヤコブに話すこともできないまま彼は戦場に赴いてしまった。
早く会いたいと思うが今は我慢するしかないようだ。
(主よ、ご先祖さまをお守りください)
不安を感じながら神に祈ることしかできないダビデだった。




