3話 元王様はパンツが見えても気にしない ★
「お…おいしい…!」
ヤコブの手料理を一口食べるなり目を輝かせるダビデ。
今日は魚をバターで焼いたのだがハーブを使い臭みを消しているためとても美味しい仕上がりとなっている。
外側はカリッとし中はふっくらと柔らかい。小麦粉をつけて焼くことで旨みを閉じ込めている。
レモンを使ったバターソースもさっぱりしながら濃厚な味で淡白な魚に合い絶品だった。
よほどお腹が空いていたのかダビデはあっという間に平らげてしまった。
「おかわりもあるぞ?たくさん食べてくれ」
と言うと嬉しそうな表情を浮かべて再び食べ始めたのだった。
借りた家で2人で暮らし始め数日が経った。
互いに協力し合い順調に共同生活を送れていることに対し満足感を抱いていたわけだが、一つだけ問題があったーー
***
今日も魔物討伐のため森に来ていた。
最近この辺りの森では頻繁に異変が起きているようで生態系に変化が生じているようだ。その原因を探るための調査も兼ねての依頼である。
「ここら辺には特に変わった様子はないな」
「ええ、確かに気配はあるんですが……」
辺りを見回しながら歩いていくうちに大きな木の前に辿り着いた時のことだ。
突然頭上から何かが降ってきたかと思うとそれは目の前に着地した。
そこにいたのは巨大な猪のような生き物であった。
全身が赤く硬そうな鱗に覆われており牙が大きく鋭い歯が並んでいるのがわかるほどだった。明らかに通常の個体とは異なる様子であり警戒を強めることにした。
「私が引きつけます!その隙に攻撃してください」
ダビデは素早い判断で指示をすると剣を構え突撃していった。
猪はその巨体からは想像できないほどの速さで突進を仕掛けてきたものの、彼女はそれを難なくかわすと背後に回り込んだところで跳躍した。
(あっ………)
その時ヤコブの視界に入ったのは、裾から見えるダビデのパンツであった。しかもお尻の部分が丸見えの状態である。
ヤコブは慌てて目を逸らそうとするが逆に釘付けになってしまった。
というのも彼女の尻はとても美しく魅力的だったからだ。思わず見惚れてしまいそうになるほど綺麗な形をしていると思ったのである。
そして下着は清楚な白であり男なら誰しも好きになってしまうようなデザインをしていることに気付かされた。
(いかん!今は戦わねば!!)
ヤコブは魔物に剣を振り下ろすと同時に邪念を振り払い戦闘に集中することにした。
それから数分後ーー なんとか倒すことができたようだった。
勝つことができほっと胸を撫で下ろす。
するとダビデが駆け寄ってきたので労いの言葉をかけることにする。
「お疲れ様だったな。怪我はないか?」
「はい。大丈夫です」
「な…なあダビデ。その服だが…丈が短いんじゃないか?」
「え?そうでしょうか?動きやすくていいと思いますけど?」
きょとんとした顔で答える彼女を見て苦笑するしかなかった。
どうも本人は下着が見えることを気にしてないらしいので注意するのはやめておくことにしようと決めたのだ。
(こんな調子でこの子と2人で暮らすなんてできるんだろうか……?)
そんな心配を抱きつつも仕事を再開するべく移動を始めることにした。
彼は魔物や悪者との戦いだけでなく、性欲との戦いにすでに身を投じていることに気付いていなかった……。




