4話 最悪の事態
翌日。
賊が現れるという情報を掴んだヤコブとダビデは、街はずれを歩いていた。
賊は旅人を狙うため、人目につきにくい場所に現れる可能性が高いらしいので人気のない場所を中心に探索していくことにしていた。
「さて、そろそろ休憩しようか。腹が減っただろう?」
2人は道端に座り込み昼食を取ることにした。
ヤコブは保温瓶に入れたスープをカップに注ぎダビデに渡す。
「あれ?これ、ご先祖さまが前に作ってくれた豆のスープ…?」
てっきり城の料理人が作ったものかと思っていたのだがどうやら違っていたらしく驚いている様子だった。
「……おいしい!」
一口飲んだ瞬間ダビデの表情が緩むのを見て嬉しくなるヤコブ。
「こっちも食べてみるかい?初めて作ったんだが」
そう言って差し出したサンドイッチにはハムやチーズ、野菜などが挟まれていた。
「これは…?この世界の料理ですか?ご先祖さまが作ったんですか!?」
「ああ、実は城の料理人に、この世界の料理を習ってみたんだ」
さっそく一口齧り付いたダビデだったが……
「お、おいしい!!パンも柔らかいし具材も新鮮だしすごく美味しいです!!」
目を輝かせて喜ぶ姿を見て思わず笑みが溢れてしまう。
ダビデは夢中でサンドイッチを食べ進めていく。
その様子を見て満足げな表情になるヤコブ。
「私は、ご先祖さまの料理が一番口に合います。城で出される料理はどれもおいしいですが、ご先祖さまが作ってくれるものが一番おいしいです」
「おいおい。私はただの素人だ。プロに敵うはずないだろう」
「でも私はご先祖さまの料理が一番です。私の口に合うんです!」
ムキになる彼女の様子に苦笑いしつつヤコブは頭を撫でてやるのだった。
(可愛い奴だ…)
そんな風に幸せな時間を過ごす2人だったがーー
数時間後に最悪の事態が訪れることになるとはこの時はまだ知る由もなかった……。
***
一方その頃……街の外れでは男たちが集まっていた。
1人の男が声を張り上げて指示を出す。
「よし!お前たち準備しろ!ターゲットが現れたらすぐに行動に移すんだぞ!」
男の周りには数人の男たちの姿があったが全員屈強な肉体をしており明らかに一般人ではないことがわかる。
彼らは人攫い専門の盗賊団であり普段は貴族などの金持ちから金品を奪うことで生計を立てている者たちであった。
今回彼らが狙う獲物というのは女性である。しかも処女で美しい娘であればなお良しだと言っていた。
そんな彼らの目の前に現れたのは、1人の女性だった。
「あれは冒険者の女か?良い女だな。胸も大きいし美脚じゃないか……」
リーダー格の男が舌なめずりしながら近づいていく。
だがーー
近づいた男はあっという間に取り押さえられてしまった!
驚いた他の男達は一斉に飛びかかる。
だが華麗な身のこなしにより次々と倒されてしまい、残るのはもう数人だけになってしまった。
残された賊は恐れをなし逃げ出すのだった。
「よし!さすがダビデだな。拘束しよう」
陰で見守っていたヤコブは、隠れていた場所から飛び出すと男を縛り上げ猿轡を噛ませる。
これでもう安心だろうと安心したその時だった……!
突如悲鳴が響き渡る。
遠くに、別の賊が女を襲おうとしているのが見えたのだ!
正義感が強いダビデはすぐに駆け出して助けようとした。
しかし・・・
その女はダビデを後ろから強打した!
(な…何!?まさかこの女…)
ダビデは気が遠くなっていき、あっという間に男達によって攫われてしまった・・・。
「!?ダビデーーーー!!!」
慌てて救い出そうとヤコブが後を追うが、異世界の乗り物に乗った彼らは素早く姿を消してしまったのだったーーー
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これまで毎日更新してましたが、更新頻度が今後2日に1回になる時もあるかもしれません。
引き続きお読みいただけると幸いです。




