3話 ダビデの新衣装(くノ一風) ★
「い、いや。私の信仰では婚前交渉はできないのだ」
「信仰…?ああ、宗教ってこと?今時そんなの気にする奴いないでしょ」
呆れた様子で言う女に反論しようとしたがそれよりも早く距離を詰められてしまう!
そのまま壁際に追いやられると逃げ場を失ってしまう。
「お兄さん、良い男よね。城の侍女達も騒いでたわよ。イケメンだって。それに…」
そっとヤコブの胸に触れる女。
「筋肉もついていて逞しくて素敵だわ……♡」
耳元で囁かれると背筋がゾクッとする感覚に襲われた。
このままではいけないと思い距離を取ろうとするが…女はキスをしようと迫ってくる。
唇が触れ合いそうになったその時ーーーー!!!
「ヤコブさま……?」
聞き覚えのある声がする。ダビデの声だと気付いたヤコブは慌てて顔を背ける。
(ダビデに見られてしまった…!違うんだ、誤解だ!! )
心の中で叫ぶヤコブ。
「あら、可愛い子じゃないの〜♪」
女はダビデを見ると嬉しそうに笑った後こう言った。
「あなた、すごく良い体してるわね。巨乳だし顔も美人さんだから可愛がってあげるわよ〜」
何と、ダビデの胸を揉み始めたのである!
だがダビデは気にする様子もない。
いかにも揉み甲斐がありそうとばかりにダビデの大きな胸を堪能しているようだった。
「お、おい…!いい加減に…っ」
さすがにヤコブは怒るが、女は予想外の言葉を口にしたのだった。
「あなた達冒険者なんでしょ?この子に似合う服をプレゼントしてあげるわ。今の服より動きやすくて可愛いやつをね♪」
***
ヤコブの目の前に、新しい冒険者用の服に着替えたダビデが立っている。
まるでくノ一のような格好で日本の着物にも似たデザインになっていた。
腰に帯を巻き、丈が短く太ももが顕になっている。
しかし布面積が少なくならないようニーハイソックスを着用している。
いわゆる絶対領域状態で見た目もオシャレだ。
中にはインナーを着ていて、武器や薬などを携帯できる工夫もされており軽装で動きやすそうな装備だった。
(お、おお…確かに軽装で動きやすそうだ。だが、む、胸が……)
大きな胸が強調されているような格好なのでどうしても視線がそちらに向いてしまう。
ダビデは特に気にしていないようだが、ヤコブにとっては刺激が強いようだ。
「ほう…確かに動きやすい。それに、少し故郷の服に似ているのが良いな」
感想を呟くダビデ。
古代イスラエル時代の服も着物に帯を巻くようなスタイルだったので馴染みがあるようだ。
ダビデは気に入ったようだった。
「ところで貴方は何者なのですか…?」
「ああ。私は城の諜報員で名前はマリカというわ。よろしくね♡」
ウインクをしながら答える彼女。
「貴方達が任されている人攫いの件だけど、私が情報を掴んでいるの。それを教えてあげようと思って声をかけたのよ♪まあちょっと下心もあったけど♡」
(やはりそういうことだったか)
内心呆れつつも情報提供してくれるのであればありがたいと感謝した。
そして、改めて事件の概要を説明することにした。
すると彼女は納得したようで頷きながら聞いていた。
「組織に雇われてる賊がおそらく明日あたり現れるはずよ」
「何…!それは本当か!?」
驚く2人に彼女は自信満々な表情で頷く。
「ええ。奴らは若い女を狙ってくるはず。そこのお嬢ちゃんを囮にして捕まえればいいわ」
女の情報は信頼に値するかは判断できないが、賊を捕まえ吐かせれば効率的だと考え作戦を練ることにするのだった。




