8話 何だあの胸は!? ★
「ダビデの奴どこに行ったんだ?」
ヤコブはダビデの姿を探していた。
「ダビデさん。何て美しいんだ…いつもの服も良いが、ドレス姿も素敵だよ」
うっとりとした顔で見つめてくるシャファクを見てぎこちなく笑うダビデの姿が飛び込んできた。
(ダビデーー?な…!!何だあの胸は!!??谷間まであるじゃないか!!!???)
普段の冒険者用の服の時ですら、胸の膨らみがわかるが、そのドレスは体の線がはっきりと出ていてかなりセクシーな印象を与えるものだった。
胸ははち切れそうなほど大きく、今にも溢れ落ちそうなたわわな果実のようだ。
腰の辺りもきゅっと括れておりスタイルの良さが強調されていた。
普段とは全く違う装いをした彼女に釘付けになってしまう。
そんな彼女を見ていると、シャファク王子と目が合ったような気がした。その瞬間背筋が凍るような感覚が襲う。まるで獲物を狙うかのような目付きをしていたからだ。
「あ、ごせん…いえ、ヤコブさま!」
気付いたダビデが声をかけてくる。それに反応して我に返ったヤコブは慌てて平静を装った。
「どうした。こんなところで何をしているんだい……?」
内心動揺しながらも平然を装って問いかけると彼女は答えた。
「王子がドレスを用意してくださったので……」
それを聞いて更に衝撃を受ける。まさか王子自ら用意したものだとは思わなかったのだ。
確かに似合っているし魅力的ではあるが複雑な心境だった。
シャファク王子は今もダビデをうっとりした目で見ている。そして大きな胸に視線を移すとにやりと笑ったように見えた気がした。
その表情を見た瞬間ゾクリとした感覚に襲われる。
危険だと感じた瞬間だった。
咄嗟に彼女の腕を摑むと自分の方へ引き寄せると抱きしめるように庇っていた。
「ヤコブさま…?」
不思議そうな顔で見上げてくる彼女を安心させるように頭を撫でると微笑みかける。すると彼女も微笑み返してくれた。
そんなやり取りを見ていたシャファクは不機嫌そうに顔を歪めるとその場から立ち去ってしまうのだった。
(うう…胸が苦しい…)
女装をしている抵抗感より、服の胸のサイズがきつくて息苦しさを感じる方が大きかったようだ。
「ダビデ。着替えたらどうだ?その服も良いがお転婆なお前らしくもない」
苦しそうな様子を察したのか心配そうに言ってくるヤコブ。
ダビデは救われた気持ちで頷くのだった。
(ご先祖さまにはいつも助けられているな)
ヤコブがこっそり胸を盗み見していることに気づかずに感謝するのだったーー




