最終話 新たな未来へ 後編
最終章15話と16話「初夜」のR18全文をpixivに載せてます。
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少しシチュエーションが異なります。
※18歳以上の方でお願いします。
『貴方達って異界から来た人間なの?』
あまりにも唐突に、自分達しか知らない秘密を突きつけられ動揺してしまう。なんとか平静を装って答えることが出来たのだが内心焦ってしまっていた。
「な、何言ってるんだ。酔ってるのか?マリカ」
戯けて誤魔化そうとするが彼女は妖艶な笑みを浮かべたまま言葉を続ける。
「実は私……預言者の家系に生まれてるの。私の家系では『異界から来る救世主』が現れると昔から預言で伝えられているのよ」
突然そんな事を言い出したものだから呆気に取られてしまう。冗談かと思ったが彼女の真剣な表情を見るとそうではないことがわかる。
「そして私も預言を稀に受け取ることがあってね。その異界からの救世主はこの時代に現れていて、私も彼らの協力者になりなさいと言われていたんだけど……貴方達だって直感でわかったのよ」
「…………」
何を言うべきかわからず黙り込んでしまうヤコブ。だが観念したように語り出した。
「……そうだよ。私とダビデはこの世界とは別の世界の人間だ」
それを聞いてマリカはどこか嬉しそうだ。自分の勘が当たっていたことが嬉しいのかもしれない。
「そう。この世界は表向きは平和だけど裏では人間達は支配下におかれている状況なのよ。人類を支配する者達がいるのだけど彼らは強大な力を持っていて誰も逆らうことが出来ない。平和を維持するためにね。だけどそれを変えていく時が来ているようね」
あまりにスケールが大きく実感が湧かないが、彼女が真剣に話していることは伝わった。
「ま、だけどせっかく来たんだからこの世界を楽しめばいいんじゃない?ダビデちゃんと結ばれたんだからさ!」
急に明るくなり普段のテンションに戻った彼女をみて呆気にとられてしまった。先程までのおどろおどろしい雰囲気はまるで感じられなかった。まるで別人のようだ。
(そうだな、キングソロモンさまもそう言っていたしな。しかし…昔から伝わる『異界からの救世主』の預言か……もしや私とダビデがこの世界に転生したのは、実はもっと深い意味があったのではないだろうか……?)
そんなことを思っていると演奏を終えたダビデが戻ってきた。マリカは野暮天になりたくないようでさりげなく他の男の方へ行ってしまった。それを見て苦笑するしかないヤコブなのだった。
「ヤコブさま、上手く演奏できました!聴いてもらえましたか!?」
無邪気に喜ぶ姿に思わず笑みが溢れそうになる。本当に可愛らしい娘だと改めて思った。
そんな彼女を見ていると愛おしさがこみ上げてきて抱きしめてしまいたくなる衝動に駆られたが周りに人がいるので我慢することにした。
(今でなくても今夜二人きりになったらいくらでも出来るだろうしな……)
そう思うと口元が緩んでニヤけてしまいそうだ。そんな邪念をかき消すように咳払いをし、彼女に微笑みかけるのだった。
***
隣国の結婚式から数週間後ーーー
「ヤコブさま、早く早く!」
いつものように冒険者の仕事をする2人だが相変わらずダビデは元気いっぱいで楽しそうだ。その様子を眺めながら微笑むヤコブの姿があった。
彼女と過ごす日々は本当に楽しいものだった。以前にも増して愛情が増してきてしまって自分でも困ってしまうぐらいだ。
いや、困るどころかむしろ嬉しくて仕方がないのだ。こんなにも素敵な女性と出会えて結婚出来たことに感謝したい気分だった。
ダビデに負けず元気な、元は馬だった聖獣2匹は彼女の後を追いかけ回しながら遊んでいる様子が見える。
2人はそれぞれ馬を保有していたが、もう1頭の馬も聖獣として生きることを選んだのだった。元々仲良しの馬達だったので同じ種族の聖獣となって一緒に居られることが出来て喜んでいるに違いない。
「こらこら、そんなに走ると下着が見えるぞ…全く仕方ない奴だな……」
注意しながらも顔はデレっと締まりがない状態だった。
「そうだ。今回の依頼が終わったら旅行にでも行かないか?二人でゆっくり過ごそうじゃないか」
今回の依頼は難易度が高く、疲労も蓄積していたので慰安も兼ねての提案だったのだがダビデは嬉しそうな表情を浮かべた後に答える。
「いいですね!2匹も一緒に連れて、みんなで行きましょう!楽しみだなあ……!」
ニコニコと笑う姿を見て自然とこちらも笑顔になる。そしてダビデと聖獣達の後を追いかけながらこんなことを思っていた。
(この世界を私達が変えていかなくてはならない……なぜ私達なのかはわからないが、あの子と一緒であれば必ず成し遂げられると思う……!どんな困難が立ち塞がろうと私はこの子を守り抜くんだ!!絶対に幸せにしてみせる!!)
生前男だったのに、試練により女になってしまったダビデだが、その理不尽な運命を受け入れ自分と生きることを選んでくれた。
そんな強くて健気な彼女を守るためならば何でもしようと決意を固めたのだ。どんなことがあっても守り抜いてみせるのだとヤコブは強く心に誓うのだった。
こうして2人は新たな未来に向かって歩み出すのだったーーーー
ー完ー
本編は完結しました。後日後書きを載せます。
また、番外編を続けて載せさせていただく予定です。不定期更新となるかもしれません。
もし良ければもう少しお付き合いいただけると嬉しいです。
読んでくださってる皆さまありがとうございます。
当小説はリアクションのお気遣い無用です。読んでいただけることが有難いと思ってます。
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