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8話 ヤコブの覚悟

「……なんだと?」


思わず聞き返すと彼女は悲しげに目を伏せたまま答える。


「性転換の魔法を受ければ元の男に戻れるのではないかと思って……」



それを聞いて愕然とするしかなかった。



(え・・・?男に、戻る…?ダビデが、男になってしまうというのか?)


その事実を認識した瞬間、目の前が真っ暗になり足元が崩れ落ちていくような感覚に襲われた。まるで奈落の底に突き落とされたかのような絶望感に襲われると共に胸の奥底から様々な感情が湧いてくる。

思わず飲み込まれてしまいそうになるほどーーー


「ご先祖さま…ヤコブさま…。私は……貴方を慕っております。なぜか女の体になってこの世界に来てしまい、悩んでいた私の心を明るくし、幸せを与えてくれたのが貴方でした」


涙を流しながらそう語るダビデの言葉を聞き、ヤコブは正気を取り戻すと同時に愛おしさが込み上げてくるのを感じた。



(ああ…やはりこの子は・・・こうして私を真ん中に戻してくれる)


「ですが……男に戻る以上、それはもう叶わないことはわかっています。ヤコブさま・・・私は貴方と別の道を歩みます。ですが…貴方の幸せをずっと願っていることだけは忘れないでくださいね」



そう言って精一杯微笑む彼女を見ていると胸が締め付けられるような思いに駆られたが何とか堪えて笑顔を作ることに成功したようだ。


「ありがとう、ダビデ。私の気持ちを聞いてくれないか?」


ヤコブはダビデの目を真っ直ぐ見つめながら、秘めていた想いを彼女に告白する。



「私は・・・お前を愛してしまった。お前に求婚するつもりだったんだ」

「!!!」


それを聞いた瞬間、彼女は大きく目を見開いて驚いていたようだったが、構わずヤコブは言葉を紡いでいく。



「もしお前が男に戻るなら…私はお前を愛せないだろう。我々の信仰では同性愛は罪だからな」

「…………」


ダビデもそれはわかっていたようだが悲しそうに目を伏せる。



「だがな、ダビデ」

「?」

「私はお前という人間が好きなんだ。お前が男の姿でも……仲間でいたいと心から思うのだ」



それを聞いた瞬間、ダビデは大きく目を見開いてヤコブの顔を見つめた。

まさか受け入れてもらえるとは思っていなかったのだろう。その表情には驚きの色が見えるが同時に喜びの色も混じっているように見えた。



「う、うう……ヤコブさま……!ありがとうございます……!」


そう言うと彼女は再び泣き出してしまうのだった。

ヤコブはそんな彼女の涙を優しく拭ってやると、親愛の意を示すように手を差し出して握手を求める。


大好きな彼の大きく温かい手を、ダビデはそっと握り返したのだったーー だが次の瞬間、目の前の光景に再び目を見開くことになる。

読んでくださってる皆さま、誠にありがとうございます。

今月末よりいいね受付停止が廃止されリアクションボタン実装が強制的になるようです。


当小説はリアクションのお気遣い無用です。読んでいただけることが有難いと思ってます。

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