6話 本当は男だったんです
「は、離してください…!」
「すまない!痛かったか?つい力が入ってしまったみたいだ……」
ヤコブは力を緩めるがそれでも自分の腕から逃すまいとするかのようにしっかりと掴んでくるので離す気はないようだった。そのことに戸惑いを覚えながらもなんとか言葉を絞り出すようにして訴えることにする。
「私のことはもう忘れてください」
「なぜ急にそんなことを言うんだ?何か事情があるんだろう?お前とこれまで過ごしてきて、お前がどんな人間なのかはよく分かっているつもりだよ。だから頼む、話してくれないか?」
懇願するように言う彼に心が揺らぐのを感じる。
「お願いです、離して……!」
そう言って暴れる彼女を落ち着かせるように頭を撫でながら優しい声音で話しかける。
「大丈夫、大丈夫だから落ち着いてくれ。何があったか知らないが落ち着くまで待つから」
その言葉を聞き、抵抗を止めると大人しくなった彼女を見てホッとしたように息をつくとさらに続けた。
「良かったら聞かせてくれないか?お前の身に何があったのか、何があってそんなに苦しんでいるのかを」
それを聞いた瞬間、目頭が熱くなるのを感じたがぐっと堪えて唇を噛み締める。
もう観念して打ち明けるしかないーーー
ここまで追いかけてきてくれた彼に少しでも誠意を示すべきだとダビデは感じていた。
もう本当のことを言うしかない。ずっと逃げてきたというのに観念してしまうと不思議と覚悟が決まるのだった。
そうして彼女は静かに語り始めた。
(あぁ、ついに知られてしまうんだな……ずっと隠して嘘をついてきた私の秘密を……)
そう思うと涙が溢れそうになるが必死に堪えることしかできなかった。
そんな様子を黙って見つめている彼の視線を感じながらも言葉を続けることにしたようだ。
「実は私、本当は男だったんです……」
「・・・・・・・え?」




